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コロナの症状緩和で海外医師も注目!「納豆」の新世界

【連載】食でかなえるステイヤング 第3回前編(文:山本二季/監修:西沢邦浩)

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健康医療ジャーナリスト・西沢邦浩さん監修による、若々しく健康に生きるための食を考える連載企画。 第3回は、古くから家庭で愛される「納豆」の新たな魅力について、前・後編にてお届けします。

前編では、納豆に含まれる話題の栄養素をピックアップ。健康を促す多くの栄養素が含まれていることで知られる納豆ですが、いま新たに注目を集めているのが、ビタミンK、スペルミジン、ポリ-γ-グルタミン酸といったステイヤングに関わる栄養素です。

世界が注目!納豆に含まれる新トレンドな栄養素

納豆に含まれる栄養素として、有名なのがナットウキナーゼ。ナットウキナーゼにはフィブリン(血液が固まる際に関わるたんぱく質)を分解して血をサラサラにする作用があり、納豆を食べることで心血管疾患による死亡リスクが低下したという研究も報告されています(※1)。

そんなナットウキナーゼに負けず劣らず、世界に注目される栄養素が、納豆にはまだまだあるのです。

注目の栄養素1
ビタミンK

ビタミンKは、正常な血液凝固に欠かせない栄養素。動脈硬化を予防するマトリックスGlaタンパク質(MGP)や、骨を形成するオステオカルシンの活性化に関わることも明らかになっています(※2)。

また近年では、オランダの医師たちがビタミンKと新型コロナの症状緩和との関連性を見出し、注目を集めました(※3)。新型コロナウイルスは、血液凝固を引き起こし肺にあるゴムのように伸び縮みする組織、弾性繊維を分解するといわれます。対してビタミンKは血液凝固を調節し、肺の弾性繊維を保護すると考えられているのです。

ビタミンKには、ビタミンK1とビタミンK2(=メナキノン)の2種類あり、中でも、食材からの吸収効率が高いビタミンK2を豊富に含むのが納豆です(※4)。それは「世界中で特に多量のビタミンK2を含む食品」と称賛する研究者が世界にいるほど。

厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」で定められている、ビタミンKの食事摂取目安量は、成人の男女ともに150㎍/日。納豆1パック(45g)には、ビタミンKがなんと270㎍も含まれているんです。

注目の栄養素2
スペルミジン

ほぼすべての生物の体内に存在するスペルミジンは、エイジングケアやオートファジー誘導、抗炎症、抗酸化、細胞増殖活性など、幅広い生理機能を持つと考えられています(※5)。

加齢とともに生成能力・組織中濃度は低下することがわかっていますが、マウスを用いた研究では、スペルミジンの経口投与によって寿命が25%延長したという報告もあります(※6)。

そんなスペルミジンは、食べ物からの摂取も可能。食品の発酵プロセスでつくられるため、チーズやヨーグルト、味噌や醤油などの発酵食品に含まれています。中でも納豆は、スペルミジン含有量が極めて多いのが特徴。 米味噌で8.2㎍/g、淡口醤油で10.0㎍/gに対し、通常の納豆で平均56.1㎍/gを含むのです(※7)。

注目の栄養素3
ポリ-γ-グルタミン酸

納豆についたねばねばの主成分ポリ-γ-グルタミン酸(PGA)は、胃壁の保護や、腸管での老廃物の排出促進などに役立つといわれています(※8)。また、カルシウムをはじめとしたミネラルの吸収促進効果も期待されているのです(※9)。

さらにポリ-γ-グルタミン酸には、食後血糖値を抑制するという報告があります。納豆1パックを白米と共に摂取した場合、白米のみを摂取した際に比べて血糖値上昇が抑えられ、また含有量が多いほど、食後短時間での血糖値上昇が抑制されました(※10)。

納豆に含まれる注目栄養素をしっかりとるなら「ひきわり納豆」がおすすめ!

納豆の発酵プロセスで増える栄養素をしっかりとるなら「ひきわり納豆」がお得、というのをご存じでしたか。

一般的な納豆は「糸引き納豆」と呼ばれ、蒸煮した大豆全粒を納豆菌で発酵させたもの。その一種である「ひきわり納豆」は、大豆を割砕して種皮を除いたものが原料です。大豆全粒を使用する糸引き納豆に比べて表面積が大きく、納豆菌による分解・発酵面積が広くなるため、発酵で増える栄養素の生成量が増えるのです。

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可食部100g当たりで比較すると、上記のビタミンKでは、糸引き納豆が600㎍に対して、ひきわり納豆が930㎍と、約1.5倍に(※11)。栄養面でお得感がありますね。

いま注目の栄養素を豊富に含む納豆で、ステイヤングな食習慣を!

ビタミンKやスペルミジン、ポリ-γ-グルタミン酸と、健康寿命に関わる栄養素を豊富に含む納豆。“血液をサラサラにするワルファリンを服用している方は薬の効果が弱まる可能性”がありますが、それ以外の人にはうれしい効果ばかりです。一日1パックで豊富な栄養素をしっかりとれるから、続けやすいのもいいところ。世界が憧れる納豆、ぜひ食生活の習慣にしてください。

後編の『フランス人も魅了!世界の納豆料理探究 【アジア料理のレシピ3品付】』はこちら

※1:Nagata C,et al.:Am J Clin Nutr. 2017 ;105(2):426-431.
※2:佐藤俊郎、加茂修一:日本食品科学工学会誌. 2013;60(9):527-533.
※3:Visser MPJ, et al.:Front Nutr. 2022;8:761191.
※4:Schurgers LJ, Vermeer C.Haemostasis. 2000;30(6):298-307.
※5:Han W et al.:Pharmaceutics. 2022;14(7):1500.
※6:王梓, 大畑佳久, 千葉卓哉:オレオサイエンス. 2018;18(2):55-60.
※7:井部明広:東京健安研セ年報. 2004;55:13-22.
※8:納豆PRセンター, 「納豆の発酵による機能性」ポリグルタミン酸
※9:三星沙織:日本調理科学会誌. 2019;52(1):33-37.
※10:農研機構, γ-ポリグルタミン酸高含有納豆の食後血糖値上昇抑制作用
※11:文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」

【西沢 邦浩さん連載「食でかなえるステイヤング」】
第1回 日本の長寿食「沖縄伝統料理」とは?
第2回 世界が認める健康食材「ナッツ」でヘルシースナッキング

監修
西沢 邦浩さん
早稲⽥⼤学卒業。⼩学館を経て、91年⽇経BP社⼊社。98年『⽇経ヘルス』創刊と同時に副編集長に着任。2005年より編集⻑。08年に『⽇経ヘルス プルミエ』を創刊し編集長をつとめる。2014年⽇経BP総研 マーケティング戦略研究所上席研究員、16年より同主席研究員。2018年4⽉より⽇経BP総研 メディカル・ヘルスラボ客員研究員。ほかに、同志社⼤学⽣命医科学部委嘱講師、⽇本腎臓財団評議員などを務める。 著書に、『⽇本⼈のための科学的に正しい⾷事術』(三笠書房)など。


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編集:おいしい健康編集部
文:山本二季
監修:西沢邦浩