フランス人も魅了!世界の納豆料理探究 【アジア料理のレシピ3品付】
公開日: 2022年11月30日
【連載】食でかなえるステイヤング 第3回後編(文:山本二季/監修:西沢邦浩)
健康医療ジャーナリスト・西沢邦浩さん監修による、若々しく健康に生きるための食を考える連載企画。第3回は「納豆」の新たな魅力についてお届け。
前編では納豆のいま注目されている栄養素と、糸引き納豆とひきわり納豆の栄養成分の比較についてお伝えしました。
後編では、バリエーション豊富な世界の納豆料理をご紹介。実は、世界にはさまざまな形状の納豆を使った、多種多様な納豆料理が盛りだくさんなんです。おいしい健康の管理栄養士が、ミャンマー、韓国、中国の納豆料理からインスパイアされて開発した新レシピも要チェック。
前編 コロナの症状緩和で海外医師も注目!「納豆」の新世界を読む
そもそも納豆の定義って?
納豆とは、蒸した大豆を原料にした発酵食品のこと。現在では「納豆」というと、蒸煮した大豆全粒を納豆菌で発酵させた「糸引き納豆」をさすことが一般的です。
糸引き納豆の発酵に使われる納豆菌は、自然界に存在する常在細菌である枯草菌の一種。枯草菌は枯れた植物などに多く存在し、たんぱく質や炭水化物を分解する酵素を大量に生産します。この枯草菌が発酵に使われているかどうかが、納豆の定義のひとつと言えるでしょう。
納豆菌は耐熱性があるため、高温でも死滅しません。前編で取り上げた栄養素のうち、加熱調理で働きが弱まってしまうのはナットウキナーゼのみ。納豆菌がつくるビタミンK2も熱に強いんですよ。
世界の納豆の起源
日本の納豆の起源は諸説ありますが、どれも伝説の域を出ていません。しかしいずれにしても糸引き納豆の発祥は、煮た大豆とわらの偶然による出会いがきっかけと考えられています。
しかし世界に目を向けると、その発祥は多様です。製造工程や食べ方も、似ているところもあれば全く違うところも。さまざまな場所で自然発生的に、その国独自の納豆が誕生していったと考えられるのです。その一部をご紹介します。
アジアの納豆
ミャンマーのせんべい納豆「トナオ」
稲わらではなく、クワやイチジクの葉やシダで大豆を包んで発酵させます。せんべい状にして3~4日ほど天日干しすることで、1年ほど常温保存できるのだとか。
せんべい状になっても、納豆の匂いや味わいは日本の納豆とよく似ているそう。炙ったり軽く揚げて塩を振って食べます。
中国の「豆豉(とうち)」
中華調味料のひとつとして有名な豆豉。水で戻した黒大豆を蒸し、塩や麹、酵母などを加えて発酵させた後、干して乾燥させます。
日本の浜納豆や寺納豆によく似ていて、塩辛く風味が強いのが特徴。刻んで炒めものに混ぜたり、素材と合わせて蒸したりと、料理の味に深みを持たせ香りを付けるのに使われます。
中国ミャオ族のガオヨウ
煮た大豆を化学繊維の袋に入れ、シダを敷き詰めて布をかぶせた鍋に置いてフタをしたら、このまま2晩おいて完成。
見た目も味も日本の納豆そっくり。日本と同様にネギや醤油と混ぜて食べる他、香菜や唐辛子などと和えたり、調味料として炒め物に使うことも。
韓国の「チョングッチャン」
日本と同様、稲わらで煮豆を包んで発酵させてつくられます。伝統的なつくり方では、煮豆のなかにわらを埋め込むのだとか。熟成後は塩や唐辛子粉などを加えます。
日本の納豆よりも風味がかなり強く、調味料として使われることがほとんど。主に火を通してチゲとして食べられています。
アフリカの納豆
ブルキナファソの「バオパブ納豆」
臼と杵でついたバオバブの種をソフトボール大の球状に丸めてから、蒸して発酵させます。パオパブは実、葉、種すべて食べられ、中でも実は乾燥した気候の中でビタミンやミネラルがとれ、アフリカの人たちにとっては必要不可欠なスーパーフルーツ。一方、納豆の原材料となる種にはたんぱく質とカリウムが豊富に含まれています。
そのまま食べるのではなく、茹でて取った出汁をスープに入れるのが一般的。深くてまろやかなコクと旨みを感じる味わいなのだとか。
セネガルの「ネテトウ」
美食大国セネガルで欠かせない調味料「ネテトウ」は、約20メートルの木からとれるパルキア(アフリカイナゴマメ)という豆が原料。形状はバオバブ納豆とよく似ています。
こちらも調味料としての使い方が主。スープの味付けのベースとしての使用の他、炊き込みご飯やソースの味付けにも使われています。
フランスのNATTO DU DRAGON
アジアやアフリカの辺境地で、独自の発展をとげている納豆の仲間たち。近年では、その健康効果の高さから、広く世界に広がりを見せています。
そんな納豆ブームに乗って、南仏ドラギニャンで誕生したのが「NATTO DU DRAGON(ドラゴン納豆)」。日本の納豆を愛したフランス人が研究を重ねてつくり上げたドラゴン納豆は、十分な歯ごたえと良質な大豆ならではのコクを感じる味わい。EUの基準よりも厳しいといわれるフランス政府のオーガニック認定、ABラベル付き。
キャロットサラダと和えたり、ペースト状にしてカナッペに塗ったり、トマトにのせてビネガーをかけたり…。フランス料理と納豆が合うなんて、びっくり。
調味料として「ひきわり納豆」の活用もあり!
世界に目を向けると、日本のようにシンプルに食べるだけでなく、納豆を調味料として使うことも多いことがわかりました。
実は前編で取り上げた「ひきわり納豆」も、調味料がわりにぴったり。発酵面積が広くて栄養価が高いうえ、その栄養素は熱に強いので加熱調理してもOK。デイリーな主菜にも使いやすいので、バリエーション豊かに納豆を楽しみながら、その高い栄養素をコンスタントにとれそうです。
ごはんに乗せるだけにこだわらず、納豆のいろいろな食べ方をぜひ楽しんでください。
ミャンマー、韓国、中国の料理からインスパイア!
納豆のおすすめレシピ3選
いつもと違う多国籍の納豆料理を食卓に!おいしい健康の管理栄養士が、生野菜を納豆ディップにつけて食べるミャンマー料理のナンピック・トナオ、上述の韓国料理チョングッチャン、中華料理でおなじみの回鍋肉から着想を得て、新たにレシピをつくりました。 どれも簡単につくれておいしい料理です。ぜひ、献立に取り入れてみてください。
<参考文献>
高野秀行(2020) 謎のアジア納豆 そして帰ってきた<日本納豆> 新潮文庫
高野秀行(2022) 月刊「たくさんふしぎ」通巻443号「世界の納豆をめぐる探検」
本間 和宏ほか:日本健康医学会雑誌. 2009;18(3):104-105.
国立健康・栄養研究所, ビタミンK解説
遠藤 千鶴ほか:平成22年度日本調理科学会大会. セッションID: 2P-16.
レファレンス協同データベース, ポリグルタミン酸の加熱
Wedge ONLINE, 中国で見かけた納豆は、やはりネバネバしていた
EU MAG, 母国でこだわりの納豆を広めるフランス人
【西沢 邦浩さん連載「食でかなえるステイヤング」】
第1回 日本の長寿食「沖縄伝統料理」とは?
第2回 世界が認める健康食材「ナッツ」でヘルシースナッキング
第3回 前編 海外で注目を集めるビタミンKの宝庫!「納豆」の新世界
西沢 邦浩さん
早稲⽥⼤学卒業。⼩学館を経て、91年⽇経BP社⼊社。98年『⽇経ヘルス』創刊と同時に副編集長に着任。2005年より編集⻑。08年に『⽇経ヘルス プルミエ』を創刊し編集長をつとめる。2014年⽇経BP総研 マーケティング戦略研究所上席研究員、16年より同主席研究員。2018年4⽉より⽇経BP総研 メディカル・ヘルスラボ客員研究員。ほかに、同志社⼤学⽣命医科学部委嘱講師、⽇本腎臓財団評議員などを務める。 著書に、『⽇本⼈のための科学的に正しい⾷事術』(三笠書房)など。
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