40代で糖尿病予備軍といわれたらやるべきこと2つ
公開日: 2022年12月5日
【連載】あなたの人生の主治医はあなた 第10回(文・岡田 定 医師)
少し肥満が気になりつつも甘いものが大好きでなかなかやめることができない。そんな40代のあなたは、これまで健康診断で「糖尿病予備軍ですね」と指摘されたことはないでしょうか。
もしそうなら「体調に変わりはないから、まあ、いいか」と甘く考え、そのまま放っておくようなことはくれぐれもしないでください。
糖尿病予備軍は、境界型糖尿病といわれる糖尿病の前段階です。 糖尿病予備軍の診断は、空腹のときに測定した血糖値(=空腹時血糖値)や、過去1~2カ月間の血糖の状態を表すHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)の数値によって行われます(図1)。HbA1cが5.9%以下なら正常域、6.5%以上なら糖尿病域に入ります。この間である6.0~6.4%は境界域で、ここにあたると糖尿病予備群と診断されます。
図1 HbA1cと空腹時血糖値による診断
網膜症・腎症・心筋梗塞・脳梗塞……さまざまな合併症
糖尿病予備軍であるにも関わらず、その状態を放置して、甘いものを食べ続けていると、数年のうちに糖尿病へと進行します。さらに、血糖管理を疎かにし、10年以上、悪い状態が続くようならば、体中の血管にダメージが起こる可能性が高くなります。
その状態になると、糖尿病性網膜症で視力が低下したり、糖尿病性腎症による腎不全で透析が必要になったりするリスクが高まります。さらには、心筋梗塞や脳梗塞になる危険性も。糖尿病にはさまざまな合併症のリスクがあるのです。
そうなると、今までの仕事が続けられなくなったり、経済的な負担や家族への負担が増えたりすることにもなりかねません。
糖尿病予備軍
⇒糖尿病
⇒ 糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症(透析)、心筋梗塞、脳梗塞
⇒ 視力低下、QOLの低下、認知症、通院治療
⇒ 仕事ができない、経済的な負担増、家族の負担増
今日から始めよう!食事療法と運動療法
上記で述べたとおり、ひとたび糖尿病を発症し進行すると、さまざまな合併症のリスクを抱える状態となりますが、糖尿病になる一歩手前の糖尿病予備軍の段階なら、薬を飲まずに、食事療法と運動療法で糖尿病になるリスクを低くし、こうしたリスクを回避することがより容易です。
和食、定食、魚料理が主体の健康長寿食を心がけましょう
糖尿病をお持ちの方の食事について、あまり知識のない方は、かつてのイメージから「糖尿病にならないためには、味気ない糖質制限食を口にしなければならないのか」と思われるかもしれません。
しかし、それは大きな誤解であり、糖尿病をお持ちの方のための食事が必ずしも味がないとは限りません。
例えば出汁や酢、薬草などを使えば、風味や香り、コクを高めた食事を堪能することができます。そして、そうした食事は、誰にとっても「健康長寿食」といえるものです。
健康長寿食の基本は、1日3食を規則正しく、栄養のバランスよく、適正なカロリーを守って、よく嚙んでゆっくり食べることです。
具体的には、肉料理よりも魚料理、一品料理よりも定食、洋食や中華よりも和食がおすすめです。和食は、塩分控えめであれば、世界的に見ても地中海食と並ぶ健康食といわれています。
そのほか、食事療法として忘れてはならないのは、ジュースや清涼飲料水、砂糖入りのコーヒー、スポーツドリンクなどの甘い飲み物はやめて、甘いお菓子や果物もほどほどにすることです。
糖尿病の運動療法に「ランジ」
食事療法に次いで大事なのが運動療法です。運動療法で特に糖尿病に効果的といわれているのが、レジスタンス・トレーニングです(※)。おすすめは「ランジ」と呼ばれている、立った状態で片足を前に踏み込み、元に戻るのを左右で繰り返す運動です(図2)。
図2 糖尿病の運動療法「ランジ」
2.両手を腰に置き、片足を前に踏み出す。
3.足を戻して最初の姿勢に戻り、反対側の足も同様に行う。
この1~3の動作を左右交互に合計10回ずつで1セット。1日3セットを週に3日もやれば十分です。こうしたレジスタンス・トレーニングに、さらにウォーキングやジョギング、サイクリング、水泳などの有酸素運動を組み合わせれば、相乗効果が得られます。
このようなちょっとした食事療法と運動療法を心がければ、糖尿病予備軍から糖尿病になることはありません。糖尿病予備軍から空腹時血糖値やHbA1cを正常域まで戻すことも可能です。
あなたも今日から始めてみませんか。
※Pedro Acosta-Manzano,et al. Obes Rev. 2020 Jun;21(6):e13007.
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岡田 定 先生
1981年大阪医科大学卒業。聖路加国際病院内科レジデント、1984年昭和大学藤が丘病院血液内科、1993年からは聖路加国際病院で血液内科、血液内科部長、内科統括部長、人間ドック科部長を歴任。2020年より現職。血液診療、予防医療に関する著書も多く、現在までに30冊以上を上梓している。
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