80代を快活に!フレイルを改善する3つの体操
公開日: 2022年11月14日
【連載】あなたの人生の主治医はあなた 第7回(文・岡田 定 医師)
80代のあなたは、体を動かすのがおっくうになり、足も細くなってきたと感じることはありませんか。このような状態は、身体的フレイル(虚弱)と呼ばれます。 身体的フレイルとは、さまざまな原因で筋力や持久力、生理機能が低下して、健康な状態と要介護状態の中間にいる状態です。
身体的フレイルは筋肉も食欲も落ちた状態
日常的に体を動かさないでいると、人の筋肉は落ちていきます。それにより食欲も落ち、食事量も減ります。すると筋肉がさらに落ち、体をさらに動かさなくなるという悪循環に陥るのです。
身体的フレイルになると、
・体重が減る
・筋力が低下する
・疲れやすくなる
・以前のように速く歩けなくなる
・何事もおっくうで体を動かさなくなる
といったことが起こりやすくなります。
こうした身体的フレイルが進行すると、以前のように歩けなくなり、骨粗しょう症や栄養失調、慢性心不全、肺炎などを起こしやすくなります。さらにこの状態が進行すれば、転倒、骨折を起こし、寝たきりや認知症になることも。
身体的フレイル
⇒ 歩行障害、骨粗しょう症、栄養失調、慢性心不全、肺炎
⇒ 転倒、骨折、寝たきり、認知症
⇒ 介護の必要、命の危険、経済的な負担増、家族の負担増
たんぱく質補給で筋力維持を
進行した身体的フレイルから抜け出すのは困難ですが、早期からであれば抜け出すことは十分可能。そのためには、たんぱく質を中心にしっかり食べることです。たんぱく質を豊富にとれる食材が、肉、魚、大豆、卵、乳製品。こうした食材をとることは、良質な筋肉づくりにつながります。
肉の食べ過ぎは、中年までは注意すべきことでした。しかし70代、80代にもなれば、肉はとりわけ重要なたんぱく源となるため、できるだけとるようにしましょう。
60代くらいまでは、健康のためには「食べ過ぎに注意」「肥満はいけない」「もう少しやせましょう」と言われた方も多いことでしょう。しかし、70代、80代は、むしろ逆。やせないように心がけ、筋肉を減らさないようにすることが重要です。
小さなことからコツコツと!毎日続けられる3つの体操
しっかりたんぱく質をとれるようになったら、次に必要となるのが日々の運動。とはいえ、毎日運動することはおっくうと感じる方もいることでしょう。 でも、大丈夫。そんな80代のあなたにおすすめの体操をいくつかご紹介します。
1. ラジオ体操(TV体操)
一つ目は、「ラジオ体操(TV体操)」です。子ども時代、夏休みや体育祭で一度は経験したことがありますよね。「だいぶ前のことだし、そんなの忘れた」と思っても、ラジオから流れてくる音楽をひとたび耳にすれば、自然と体が動き出すという方もいることでしょう。
「立って行うラジオ体操はどうも」と思われる方には、座って行うラジオ体操があります。ぜひチャレンジしてみてください。
2022年10月現在、「NHK Eテレ」では月曜~日曜の午前6時25分、「NHK総合テレビ」では月曜~金曜の午後1時55分(再放送は月曜~金曜の午前11時30分)に放送されています。その時間に体操してもよいですし、録画して都合のいい時間を選んで後からやるのもよいでしょう。「たかがラジオ体操」と侮るなかれ。日々のラジオ体操を習慣化すれば、見違えるほどの効果が期待できます。
2. 膝上げ体操
二つ目は、「膝上げ体操」です。
最近、歩くのがおぼつかず、医師や家族からは「もっと歩いて。もっと運動して」と言われるものの、「体を動かすのは危なっかしいし、何より怪我をするのが心配だから気が重い」と感じている方もいらっしゃるかもしれません。
そんなあなたには、座ったままできる「膝上げ体操」がおすすめです。
膝上げ体操のやり方
②右足と左足を交互に10回、ゆっくりと膝をもち上げる
毎日やれば、体の変化を実感できることでしょう。自然に習慣づけたければ、三食いずれかの食事のあとに必ず体操を習慣づけるといった、日常の何かの”ついで”に行うことを意識するとよいでしょう。
3. 椅子座り
80代におすすめの最後の体操は、逆トレ「椅子座り」です。この椅子座りは、座った状態から立ち上がるのではなく、立った状態からゆっくり座るので、逆トレーニングで通称「逆トレ」と呼んでいます。この体操は特に、座った状態からスッと立ち上がることが困難と感じている方におすすめです。
いざというときに体を支えられるよう机を前にして、ゆっくり椅子に座るシンプルな動きのため、無理なく始めることができます。
椅子座り(逆トレ)のやり方
② 5秒程度かけて、ゆっくりと椅子に座る
※お尻が座面にしっかりと着くまで、力を抜かないのがポイント
③ ①②の動作を3回繰り返す
この体操を続ければ、太ももの筋力がアップして、椅子から立ったり座ったりするのが楽になるでしょう。そして、今までよりしっかり歩けるようになったと実感できる日がくるはずです。
この体操も日常の決まった習慣と合わせてやりましょう。朝食を食べた後や昼食後、もしくは夕食後にやると一度決めてしまうと習慣化します。
身体的フレイルの予防は可能
このように身体的機能の低下が見られる身体的フレイルになると、不安要素が増えますが、一方で、早期であれば避けることができます。
身体的フレイルを食い止めるために、たんぱく質をしっかりとりましょう。そして、ちょっとした体操の習慣を心がけましょう。
【岡田定医師連載「あなたの人生の主治医はあなた」】
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岡田 定 先生
1981年大阪医科大学卒業。聖路加国際病院内科レジデント、1984年昭和大学藤が丘病院血液内科、1993年からは聖路加国際病院で血液内科、血液内科部長、内科統括部長、人間ドック科部長を歴任。2020年より現職。血液診療、予防医療に関する著書も多く、現在までに30冊以上を上梓している。
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