読む、えいよう

60代の8人に一人「CKD(慢性腎臓病)」を防ぐには

【連載】あなたの人生の主治医はあなた 第5回(文・岡田 定 医師)

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60代のあなたは、糖尿病や高血圧、肥満といった悩みはありませんか。そのような場合、健康診断を受けると「少し腎臓が悪いですね」と言われることがあるかもしれません。

「腎臓が悪い」というのはほとんどの場合、血液検査でクレアチニン値が高いことから判断されます。クレアチニンとは、筋肉を動かすためにエネルギーを使った後に出てくる老廃物の一つです。血液中のクレアチニンを測定すると、腎機能(腎臓の働き)が分かります。クレアチニン値の基準値は、一般に男性1.0mg/dl以下、女性0.8mg/dl以下です。

クレアチニン値が高いと腎機能が低下している

あなたが60代男性でクレアチニン1.2mg/dlなら、「1.0mg/dl以下が基準値だから、1.2mg/dl程度はたいしたことはない」と思われるかもしれません。60代女性でクレアチニン1.0mg/dlなら、「0.8mg/dl以下が基準値だから、1.0mg/dlと少し高いくらいはいいか」と思うこともあるでしょう。

しかしながら、これは大きな間違いです。こうした数値の場合、慢性腎臓病(以下、「CKD」といいます)が疑われます。

CKDとは、体内の老廃物を尿としてどれくらい排出できるかを示す「GFR」が、健康な人の60%以下に低下するか、もしくはタンパク尿が出るといった腎臓の異常が続く状態をいいます。

このGFRは、クレアチニン値と年齢、性別によって計算されます。腎機能が正常ならGFRは80~100で、GFRが60以下ならCKDです。クレアチニン1.2mg/dlである65歳男性の場合は、GFRが48(軽度~中等度低下)、クレアチニン1.0mg/dlである65歳女性の場合は、GFRが43(中等度~高度低下)で、明らかに腎機能が低下した状態です。「たいしたことはない」「まあ、いいか」というレベルでは残念ながらありません。

腎不全・心筋梗塞・脳梗塞につながることも

日本では、成人の8人に一人、約1330万人がCKDといわれています。

CKDを放置していると、腎機能がさらに悪くなって、いずれは透析が必要になることがあります。また、心筋梗塞や脳梗塞にもなるリスクも高くなるのです。そうすると、仕事や社会生活、家庭生活にも影響を及ぼしかねません。

【起こりうる事態】
CKD(慢性腎臓病)
⇒ 腎不全(透析)、心筋梗塞、脳梗塞
⇒ 仕事が続けられない、経済的な負担増、家族の負担増

まずは生活習慣の見直しを

日本人の平均寿命は年々伸び続け、男女ともに80代を超えて、人生100年時代と言われるようになりました。あなたがまだ60代なら、あと40年も生きる可能性があります。だからこそ、CKDを放置してはいけないのです。

CKDの原因には腎臓固有の病気もありますが、多くは糖尿病、高血圧、肥満症、脂質異常症などの生活習慣病です。

したがって、CKDの治療の中心は生活習慣病の治療そのものになります。具体的には食生活の改善、減量、節酒、禁煙、運動です。

CKDの進行を防ぐには「減塩」

CKDを根本的に治すことは難しいですが、一方で進行しなければそれほど怖い病気ではありません。

CKDの進行や合併症を防ぐために、一番大切なことは減塩です。CKDが軽度なら1日6g以下の塩分制限を守るようにします。

【減塩のポイント】
・梅干しやみそ汁、漬物を減らす
・麺類のつゆは飲まない
・加工食品(ハム・ソーセージ)を減らす
・練り製品(ちくわ・かまぼこ)を減らす
・スナック菓子を減らす
・インスタント食品を減らす
・外食は要注意
・過食しない

CKDが軽度の場合、肥満があれば体重を減らし、たんぱく質の過剰摂取を防ぐよう心がけましょう。CKDが中等度以上なら、塩分制限だけでなく、肉や魚、大豆、卵、乳製品などのたんぱく質制限や、野菜や果物を減らすカリウム制限を行うとよいでしょう。

腎臓に一生涯、元気に働いてもらうために

わたしたちの腎臓は、毎日大量の血液をろ過して老廃物を尿として排出してくれています。腎臓に負担になる生活をやめれば、腎臓は一生涯、元気に働いてくれるのです。

CKDは高度になるまで自覚症状はほぼありません。ですから、「こんなに元気なのだから、クレアチニンが少しくらい高くても大丈夫」ということはないのです。

繰り返しとなりますが、CKDを進行させないために必要なことは、食生活の改善、減量、節酒、禁煙、運動です。こうした生活習慣は、あなたの人生全体を健やかにする生活そのもの。もしも、あなたがCKDなら、定期的に検査を受けて医師の治療や管理栄養士の指導を受けましょう。そして生活習慣を見直し、健やかな人生を送れるようにしましょう。

【岡田定医師連載「あなたの人生の主治医はあなた」】
第2回 20代・30代からは、「甘い飲み物」に気をつけましょう
第3回 40代からの「肥満」は、心筋梗塞やがんなどの病気につながります
第4回 50代から気をつけたい「脂肪肝」は、食生活の改善が肝心です
そのほか、岡田定先生記事はこちら

プロフィール:現・医療法人社団平静の会西崎クリニック院長 前・聖路加国際病院血液内科・人間ドック科部長
岡田 定 先生
1981年大阪医科大学卒業。聖路加国際病院内科レジデント、1984年昭和大学藤が丘病院血液内科、1993年からは聖路加国際病院で血液内科、血液内科部長、内科統括部長、人間ドック科部長を歴任。2020年より現職。血液診療、予防医療に関する著書も多く、現在までに30冊以上を上梓している。

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編集:おいしい健康編集部