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見逃さないで!すぐ消える手足のマヒは脳梗塞の前兆かも

【連載】あなたの人生の主治医はあなた 第13回(文・岡田 定 医師)

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急に力が入らなくなったものの、10分ほどで何事もなかったように消える手足のマヒ。70代に入ってから、こうした急な手足のマヒに襲われたという方もいらっしゃることでしょう。

具体的にいうと、

・歩こうとするとよろける
・持ったものを簡単に落とす
・字が書きにくい
・お箸が上手に使えない
・手足が震える
・口や舌がよく回らず、話しにくい
・口の周囲や手足がしびれる

といったことが起きます。

中でも高血圧や糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病がある方や、日頃から飲酒や喫煙を好む方は要注意です。もしも、あなたの手足がしびれたとして、10分ほどでそのマヒが消えるとしたら、あなたはどう対応しますか。少しだけ想像してみてください。

「すぐに治ったのだから、まあいいか」とそのまま放置しますか。それとも「ちょっと気になるけど、病院に行くほどでもないだろう」と考えますか。

もしそうなら、いずれにしても重大な判断ミスをしています。

実は、これらの症状は、一時的に脳の血管が詰まり、血液が流れなくなる一過性脳虚血(以下、TIA)と呼ばれる脳梗塞の前触れです。TIAとは、「transient(一過性の)ischemic(虚血性)attack(発作)」の略で、「ティアイエー」と呼びます。

TIAの症状は5~10分のみ続くことが多く、ほとんどは1時間以内に消失します。しかしながら、そのまま放っておくと、限りなく近い将来、脳梗塞になってしまいます。

脳梗塞の前触れ、TIAとは

TIAの症状があれば、すぐに病院へ行きましょう。高齢者であり、高血圧や糖尿病などの生活習慣病があればなおさらです。

なぜなら、TIAから脳梗塞になるリスク(危険)はとても高く、TIAの症状がある方のうち半数が2日以内に脳梗塞になるからです。ですから、こうした症状がある場合は、すぐに入院治療が必要となります。

動脈硬化は自覚症状がないまま、加齢だけでなく高血圧や糖尿病、脂質異常症、さらにはお酒の飲みすぎや喫煙によって、かなり進行することで知られています。動脈硬化が進行すると脳の血管も狭くなるのです。

脳への血流が一時的に悪くなるTIAになると、まず片方の手足のマヒやしびれ、言語障害などが起こります。その場合、脳の血管は完全には詰まっておらず、脳自体が一時的に酸欠状態になっただけなので、脳細胞が壊れる前に血流は回復して元に戻ります。 

一度脳細胞が壊れると再生不可に

しかし、その状態を放置し、脳梗塞になってしまうと、脳の血管が詰まって血液が流れなくなります。そうすると、酸素や栄養が供給されなくなって脳細胞は壊れてしまいます。一度壊れた脳細胞は再生しません。

TIAや脳梗塞は、動脈硬化が高度な人や心房細動(不整脈)がある人に起こりやすい重大な病気です。

脳梗塞など脳血管障害による死亡率は、悪性腫瘍、心血管疾患、肺炎に次いで第4位です(※)。脳梗塞は死に至らなくても、半身マヒなどの後遺症を残したり、寝たきりになったりします。そうなると、あなただけではなく、あなたの家族にも、大きな負担がかかることになるでしょう。

TIAや脳梗塞の予防のために必要なこと

それでは、TIAや脳梗塞を予防するにはどうしたらいいのでしょうか。

1番目は、高血圧、糖尿病、脂質異常症をきちんと管理することです。脳梗塞の主な原因は動脈硬化です。ですから、その原因になる高血圧、糖尿病、脂質異常症の診断、治療が最も大切です。

2番目は、脳梗塞の原因になる心房細動(不整脈)を見つけて治療することです。症状がないからといって、心房細動を放置してはいけません。

3番目は、あなたが喫煙者であればたばこをやめることです。お酒が多いのであれば、適量を守ることです。どちらも脳梗塞の原因になります。

4番目は、脳梗塞予防に限りませんが食事の注意と運動です。塩分、炭水化物(糖質)、脂質を摂り過ぎないようにして、野菜を十分に摂ることです。運動する習慣を作ることです。

5番目は、脱水にならないようにすることです。脱水になると血液がドロドロになって脳梗塞を起こしやすくなります。脳梗塞は脱水になりやすい夏場に多いのです。特に高齢者は注意が必要です。

手足のマヒがあればすく病院へ

最後にもう一度。急に「左右どちらかの手足の脱力やしびれ」や「話しにくい」といった症状があれば、すぐに病院へ行きましょう。

※  国立社会保障・人口問題研究所 人口統計資料集(2022)

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プロフィール:現・医療法人社団平静の会西崎クリニック院長 前・聖路加国際病院血液内科・人間ドック科部長
岡田 定 先生
1981年大阪医科大学卒業。聖路加国際病院内科レジデント、1984年昭和大学藤が丘病院血液内科、1993年からは聖路加国際病院で血液内科、血液内科部長、内科統括部長、人間ドック科部長を歴任。2020年より現職。血液診療、予防医療に関する著書も多く、現在までに30冊以上を上梓している。

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編集:おいしい健康編集部
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