読む、えいよう

尿もれは骨盤内体操と診療、リハビリパンツで解決【80代のお悩み】

【連載】あなたの人生の主治医はあなた 第14回(文・岡田 定 医師)

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医師であるわたしは、80代や90代の方をたくさん診るようになってから、尿意切迫や尿もれ(特に女性)、夜間頻尿に悩んでいる方がいかに多いかを思い知りました。高齢になるにつれて、尿意が強くなって我慢できなくなる尿意切迫や尿もれ、夜の尿の回数が増える夜間頻尿が起こりやすくなるのです。

80代の8割が夜間頻尿に悩んでいる

夜間頻尿の悩みは、50代で5人に1人、60代で5人に2人、70代で5人に3人、80代では5人に4人といわれています。80代では実に8割です。尿もれは、80代では2~3割の方にあるといわれます(※1)。

夜間頻尿も尿もれも多いのですが、特に尿もれに関しては「人に話すのも恥ずかしい、どうしようもない」と密かに悩んでいる方が少なくありません。

しかし、尿もれは骨盤内の筋肉を鍛えることで改善できます。

尿もれを改善する「骨盤底筋体操」

尿もれを改善する体操は、「骨盤底筋体操」といいます。骨盤底筋体操には、尿もれだけでなく尿意切迫や夜間頻尿を改善する効果も期待できます。

骨盤底筋とは、膀胱や膣、肛門の位置を安定させて正常な排尿を助けている筋肉(図1)です。「骨盤底筋体操」とはこの筋肉を鍛える体操です。「骨盤底筋体操」は簡単で、座っているときでも、就寝時や起床時の寝ているときでも、外で信号や電車を待っているときでもできます。

図1
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では、早速やってみましょう。

【尿もれを改善する骨盤底筋体操】
1. 女性なら肛門と膣を、男性なら肛門を、息を吐きながら締めます。
2. 5秒間ほど閉めたら緩めます。
3. これを10回繰り返します。

骨盤底筋体操は1セットに1分程しかかかりませんが、1日2セットを2~3ヵ月も続ければ、効果をはっきりと実感できるようになります。

骨盤底筋体操には確かな効果があります。でも、残念ながらこの体操だけで尿もれを確実になくすことは難しいかもしれません。たとえ体操で効果が得られなくても、尿もれを改善する薬や手術はありますから、泌尿器科や内科で相談されるのがいいでしょう。

日常生活を快適に過ごすため おむつを使うことを恥じない

高齢になればみんな目が悪くなります。80代にもなれば耳も遠くなります。同じように、排泄機能も衰えてきます。ですから、「80代にもなれば、尿もれがあっても自然なこと」と考えるのが現実的です。

目が悪くなったらメガネをかけます。耳が遠くなったら補聴器をつけます。同じように、尿もれがあれば、おむつ(リハビリパンツ)を使いましょう。リハビリパンツを使うのを恥じる必要はありません。リハビリパンツを履きながら社会的に活躍されている人もたくさんおられます。

尿もれがあれば、まずは骨盤底筋体操をやってみましょう。それでうまくいかなければ、泌尿器科や内科で相談してみましょう。尿もれだけでなく尿意切迫や夜間頻尿を改善する薬もあります。そして、何よりもリハビリパンツを使うことを恥じないことです。

尿もれがあっても、日常生活を快適に過ごせることが一番大切です。

※1 平澤精一 『夜中のトイレに起きない方法』(アチーブメント出版、2021)

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プロフィール:現・医療法人社団平静の会西崎クリニック院長 前・聖路加国際病院血液内科・人間ドック科部長
岡田 定 先生
1981年大阪医科大学卒業。聖路加国際病院内科レジデント、1984年昭和大学藤が丘病院血液内科、1993年からは聖路加国際病院で血液内科、血液内科部長、内科統括部長、人間ドック科部長を歴任。2020年より現職。血液診療、予防医療に関する著書も多く、現在までに30冊以上を上梓している。

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編集:おいしい健康編集部
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