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糖質の過剰摂取は糖質依存症?甘い物をやめるには

【連載】あなたの人生の主治医はあなた 第17回(文・岡田 定 医師)

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体によくないとわかっているのに、甘いものが大好きで、つい食べすぎてしまう。そのせいでなかなかダイエットがうまくいかない。そんなお悩みをお持ちの方も多いことでしょう。

甘い物がやめられないのは「糖質依存症」の疑いも

甘い物がやめられない理由は、あなたがもともと「甘い物好き人間」だからではないかもしれません。近年、甘い物を食べ続けることによって、脳が「糖質依存症」になっているという事例が多数報告されています。

糖質依存症は、2022年10月11日の本連載第2回『20代・30代から、甘い飲み物に気をつけましょう』でお伝えしたとおり、別名「砂糖中毒」とも呼ばれ、血糖値の上昇にともない分泌されるドーパミンの一時的な快感を求めて、いつも甘い物が欲しくて仕方がなくなる病態です。同記事では、甘い飲み物を摂取し続けると糖質依存症になりやすいというお話をしましたが、血糖値が急上昇しやすい「甘い食べ物」でも同じことが起きます。

体に悪影響を及ぼす精製糖質の過剰摂取

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市販されている甘いお菓子やスイーツには、大量の精製糖質が含まれているものが多くあります。精製糖質とは、上白糖やグラニュー糖などの白い糖質のことで、茶色い糖質に比べて栄養が低く、エネルギーが高いので、こうした糖質を摂取すると血糖値が急上昇します。

精製糖質を大量に摂取して血糖値が急上昇すると、快感ホルモンであるドーパミンが放出されてわたしたちは一時的に幸せな気分になります。しかし、その後は、血糖値を下げるインスリンが大量に放出されて血糖値が急降下します。そうするとまた甘い物がほしくなってしまうのです。

これを繰り返す状態が、糖質依存症です。

血糖値の上昇に伴うドーパミンの快感は、あくまで一時的なもので、持続的な幸福感をもたらしません。ですから、大量の甘い物は麻薬と似た中毒性があり、糖質は麻薬のコカイン同様、依存症になりやすいという研究報告があります(※1)。

糖質依存症になり甘い物を大量にとり続けると、体重が増加し、気持ちが不安定になり、不眠を誘発。また、肥満症、糖尿病、脂質異常症、高血圧を引き起こし、長期的には脳梗塞、心筋梗塞、がんの原因にもなります。

甘い物を減らす工夫4つ

では、どのようにしたら、甘い物を控えることができるのでしょう。ここからは甘い物を減らす工夫をいくつかご紹介します。

①不足しがちな栄養素をおやつでとる

甘い物を減らす一つ目の工夫は、普段口にしているおやつを、甘いお菓子からナッツやビターチョコ、乳製品などに替えることです。

昼食から夕食までに8時間以上、間が空くような場合は、栄養となるおやつを途中でとることをおすすめします。途中で健康的なおやつをとっておけば、遅い夕食でドカ食いするといった血糖値を上昇させる悪い習慣を防ぐことができます。

無論、おやつを食べること自体がいけないわけではありません。栄養バランスを崩すようなおやつを食べることが問題なのです。そこで、下記に示すような栄養不足を補う健康的なおやつを食べるように心がけましょう。

・不飽和脂肪酸補給;ナッツ類

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健康的なおやつの代表はナッツ類です。ナッツに は不飽和脂肪酸が多く含まれ、LDL(悪玉)コレステロールを下げ、HDL(善玉)コレステロールを上げる効果があります(※2)。不飽和脂肪酸だけでなく、たんぱく質、食物繊維、ビタミンE、カルシウム、鉄、マグネシウムなども豊富です。 ナッツは脂質(脂肪)が多いので太ることを心配されるかもしれません。しかし、長期的には体重を減らす効果が期待できることが知られています(※3)

・ポリフェノール補給:カカオ70%以上のビターチョコ

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チョコレートも健康にいいおやつです。カカオ70%以上のビターチョコレートには、血圧を下げる効果のあるポリフェノールが豊富です。定期的にチョコレートを食べることで心筋梗塞のリスクが減るという報告(※4)や認知症予防になるという報告(※5)もあります。

ただし、糖分や脂肪が多いミルクチョコレートやホワイトチョコレートの食べ過ぎは、糖尿病のリスクを上げてしまいますから要注意です。チョコレートは、砂糖が少なくカカオ成分の多いものを選ぶようにしましょう。

・タンパク質補給:乳製品

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ヨーグルトやチーズなどの乳製品もおすすめです。乳製品は、たんぱく質のほか、脂肪やカルシウムが豊富で、少量でも腹持ちのよいおやつになります。

そのほか、海藻スナックやドライフルーツ、甘栗なども健康的なおやつですが、大量摂取は糖分や塩分のとりすぎにつながるので、適量を心がけましょう。

②果物の食べすぎに注意する

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果物はビタミンCや食物繊維が多い反面、主食のごはんやパン、麺類やイモなどと同様、食べ過ぎると太ります。果物に含まれる果糖は、血糖値を上げづらいのですが、果物には上白糖の主成分であるショ糖も含むので注意が必要です。

肥満のある患者さんが「ごはん、パン、麺類、イモなどの主食は、少ししか食べないようにしている」という涙ぐましい努力を訴えられることがあります。 

「お菓子はどうですか?」と尋ねると、「お菓子も食べません」と胸を張られます。ところが「果物はどうですか?」と聞くと、苦笑いをしながら「今の季節、果物はおいしいのでやめられません」とおっしゃることがよくあります。

果物は科学的に証明された健康食品で、日常的にとることが勧められます。しかしながら、適量を守る必要があります。果物の1日摂取量の目安は200gです(※6)果物200gとは、バナナなら2本、みかんなら2~3個、梨なら1/2個です。医師から食事制限を受けている方は、その量を守るようにしましょう。

③お腹をつまむ

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甘いものを減らす3つ目の工夫は、「お腹をちょっとつまむ」ことです。小腹が空いたと感じるときの空腹感は、脂肪が燃え始めた証拠。その際、お腹をつまんで、「本当に食べたいの?」「ここでまた食べちゃっていいの?」と自分に問いかけるために、お腹をつまむのです。

わたしたちの行動のおよそ半分は無意識下になされています。お腹が空いたと感じると、無意識におやつに手が伸びてしまいます。そこで、「おやつを食べる」という無意識の行動にストップをかけるために、お腹をつまむのです。お腹をつまんで痛みを感じれば脳が作動します。「本当に今食べるの?」と意識的な行動ができるようになります。

おやつを食べるのがいけないわけではありません。無意識に食べ過ぎてしまうのが問題なのです。お腹をつまみ、我に返ることで、適量のおやつを楽しむことができるようになります。   

④食べる分以外は片づけてから食べる

甘い物を減らす4つ目の工夫は、食べる分だけを取り出し、後は片づけて、それから食べ始めることです。袋入りのスナック菓子なら、まず適量の食べる分だけをお皿に置いて、後のお菓子はきっちり封をして見えないところに片付けてから、食べることです。

あなたもわたしも、食べ物の誘惑に打ち勝つことは容易ではありません。目の前にある手の届くお菓子を食べないでいるのはとても難しいのです。

幸か不幸か、私たちの脳は、甘いお菓子を食べれば快感ホルモンであるドーパミンによって幸せな気分になることを知っています。ですから食べてもよい量のお菓子だけを目の前において、それ以外のお菓子は隠してしまうのです。同じ理由で、お菓子の買いだめもやめましょう。「ほしいときにほしい分だけしか買わない」ことを原則にします。

甘い物をとり過ぎれば、私達の体は確実に蝕まれます。でもとり過ぎをやめて適量をとるようになれば、次々とよいことが起こります。まず体重が自然と減っていきます。心が安定しやすくなり、睡眠の質も向上します。お肌の調子もよくなるでしょう。

あなたも甘い物を“適量に”とれる人になりましょう。

※1 James J DiNicolantonio 1, James H O'Keefe 1, William L Wilson Sugar addiction: is it real? A narrative review,Br J Sports Med. 2018 Jul;52(14):910-913.
※2 Ronald P Mensink,et al. , Effects of dietary fatty acids and carbohydrates on the ratio of serum total to HDL cholesterol and on serum lipids and apolipoproteins: a meta-analysis of 60 controlled trials, Am J Clin Nutr. 2003 May;77(5):1146-55.
※3 Joan Sabaté , Yen Ang. , Nuts and health outcomes: new epidemiologic evidence, Am J Clin Nutr. 2009 May;89(5):1643S-1648S.
※4  Larsson S.C., Åkesson A., Gigante B., Wolk A. , Chocolate consumption and risk of myocardial infarction, Heart. 2016;102:1017–1022.
※5 Nehlig A. Br J Clin Pharmacol. , The neuroprotective effects of cocoa flavanol and its influence on cognitive performance, 2013;75:716-727.
※6 農林水産省『FACT BOOK 果物と健康』

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プロフィール:現・医療法人社団平静の会西崎クリニック院長 前・聖路加国際病院血液内科・人間ドック科部長
岡田 定 先生
1981年大阪医科大学卒業。聖路加国際病院内科レジデント、1984年昭和大学藤が丘病院血液内科、1993年からは聖路加国際病院で血液内科、血液内科部長、内科統括部長、人間ドック科部長を歴任。2020年より現職。血液診療、予防医療に関する著書も多く、現在までに30冊以上を上梓している。

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編集:おいしい健康編集部
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