【痔の基礎知識①】痔ってどんな病気?痔の種類や原因を知ろう
公開日: 2026年4月1日

監修:松島病院 大腸肛門病センター副院長 松島小百合先生
おしりの痛みや排便時の出血などがあると、「痔かもしれない」と思うかもしれません。痔は若い世代から起こりうる身近な病気で、日本人の3人に1人は痔に悩んだことがあるといわれています。この記事では、最初に知っておきたい痔の種類や原因についてわかりやすく解説。適切な対処や医療機関への受診のきっかけになるはずです。
この記事のポイント
・痔の三大疾患は「痔核」「裂肛」「痔ろう」
・痔は、便秘などの排便習慣が原因のことが多い
・症状によっては大腸がんなどの可能性もあるため、自己判断せず受診を
おしりにこんな症状があったら「痔」かも?
痔は肛門周辺に何らかの症状が起こる良性の疾患(医学的に診断される病気)の総称です。おしりの痛み、排便時の出血などの症状が見られたら、痔の可能性があります。 痔に多い症状と、考えられる痔の種類を下にまとめました。
痔によって起こりやすい症状と、考えられる痔の種類
あてはまる症状が長く続く場合や出血がある場合は、早めに病院を受診しましょう。ただし、これらの症状は痔以外の病気(例:出血の場合は大腸がんなど)の可能性もあるので、自己判断は禁物です。
出血がある場合
□トイレットペーパーに血がつく(痛みもある)・・・・裂肛
□トイレットペーパーに血がつく(痛みはない)・・・・痔核(内痔核)
□下着に血がつく(痛みはない)・・・痔核(内痔核)、痔ろう
□便に血がつく・・・痔核(内痔核)、裂肛
おしり(肛門周辺)が痛い場合
□排便時・排便後に痛い・・・痔核(内痔核)、裂肛
おしり(肛門周辺)にでっぱりや腫れがある場合
□腫れて痛みがある・・・痔ろう、痔核(外痔核)
□腫れて膿が出る・・・痔ろう、痔核(内痔核)
痔は「痔核」「裂肛」「痔ろう」に分けられる
痔にはいくつか種類があります。代表的な三大疾患は痔核(いぼ痔)、裂肛(切れ痔)、痔ろう(あな痔)です。
痔核(いぼ痔)
痔の中で最も多いタイプで、「いぼ痔」とも呼ばれます。痔核になる方に男女差はなく、45〜65歳に多いといわれています。痔核のできる場所によって内痔核と外痔核に分けられます。
【どんな状態?】
直腸の下部には血管が網状に集まる「内痔静脈叢(ないじじょうみゃくそう)」があり、肛門をぴったりとしめるクッションのような役割を果たしています(下の「健康な肛門」参照)。痔核は、この血管(内痔静脈叢)が大きくなって、腫れや出血、脱出などを起こしている状態です。

【痔核の種類】
内痔核:肛門の内側にできる痔核。直腸粘膜と皮膚の境目(歯状線)より、直腸粘膜側にできるもの。
外痔核:肛門の外側にできる痔核。歯状線より肛門管上皮側にできるもの。

【痔核の症状】
出血と脱出(腫れものが肛門から出ること)が主な症状です。
内痔核
・排便時に出血することが多い
・内痔核から血がにじみ出る場合や、時によって血が吹き出すこともある
・進行すると肛門の外に脱出することもあり、押して自然に戻るものから、常に脱出しているものも
・痛みはあまりない
外痔核
・通常は痛みや出血はないが、血栓(血のかたまり)ができる「血栓性外痔核」の場合は、強い痛みと腫れを伴う
・脱出は押しても中に戻らない
【痔核の原因】
下のようなことが挙げられますが、便の状態が良くないことが大きな原因です。排便は食事や生活習慣などによって左右されるので便通を改善することで、発症や悪化を防げます。
・くり返しいきむ
・便秘
・下痢
・便が硬い
・重いものを持つ(肛門への負担)
・妊娠や出産(肛門への負担)
【痔核の治療法】
特に症状がなければ、病気としての治療は行われません。一時的な痛みや腫れは外用薬や生活習慣の改善で対応できますが、改善しない場合は、手術になることもあります。
※治療についての詳細は、【痔の基礎知識④】病院での痔の診察・治療についてを参照してください。
裂肛(切れ痔)
裂肛は20〜50歳代に多く見られる痔で、急性裂肛と慢性裂肛に分けられます。女性の方が多く、妊娠・出産経験により起こることがあります。また、若い年代は食生活やダイエットなどで便秘になりやすい生活習慣も一因です。
【どんな状態?】
「切れ痔」とも呼ばれるように、肛門の皮膚が切れたり裂けたりする状態です。
【裂肛の種類】
急性裂肛:硬い便や下痢による一時的な裂肛。多くは数日経つと自然に治ります。
慢性裂肛:急性裂肛をくり返すと、裂け目が深くなって炎症が起こり、肛門潰瘍や肛門ポリープができて肛門が狭くなる(肛門狭窄)ことがあります。この状態を「慢性裂肛」と呼びます。
また、肛門の裂け目の周辺の皮膚が盛り上がってイボのようになる状態を「見張りイボ」といいます。

【裂肛の症状】
痛みと出血が主な症状です。
・硬い便をしたときや下痢をしたときに肛門がヒリヒリと痛む
・トイレットペーパーに血がつく、便に筋状に血が少しつく
【裂肛の原因】
便が硬すぎることで肛門に負担がかかり、皮膚が裂けてしまうことが多いですが、慢性的な下痢などのやわらかすぎる便によっても起こる場合があります。
・便秘による硬い便や太い便
・軟便や下痢
・妊娠や出産
裂肛は排便時に痛みを伴うため、排便を我慢してさらに便が硬くなるといった悪循環に陥りがちです。慢性裂肛を長いことくり返していると、肛門が狭くなることにより便が出しづらくなることがあります。
便の状態は食事や生活習慣などによって改善できるので、裂肛をくり返さないよう心がけることが大切です。
【裂肛の治療法】
急性裂肛の段階なら、裂肛をくり返さない食生活の改善や、薬で対処します。慢性裂肛で肛門狭窄になった場合や、何度もくり返す場合は、手術が必要になることもあります。
※治療についての詳細は、【痔の基礎知識④】病院での痔の診察・治療についてを参照してください。
痔ろう(あな痔)
男女とも30〜40歳代に多く見られ、痔ろうに罹患している人のうち、30%が30歳代、21%が40歳代という報告があります。痔ろうとは、細菌の感染によりできたトンネルのようなもの。放置するとがんになることもあるため、手術による治療が基本です。
【どんな状態?】
細菌の感染により、下のような過程でできるトンネルのような管を「痔ろう」といいます。膿がたまると腫れや痛みを伴います。膿が出ることや膿のたまったしこりができることもあります。

① 肛門の内側にあるくぼみ(肛門小窩)から細菌が入り、肛門腺に入り込む
② 細菌に感染し、肛門腺が炎症を起こし、化膿して膿がたまる(肛門周囲膿瘍ができる)
③ 膿が皮膚側に破れ、細菌の入口と膿が流れ出る部分まで1本のトンネルのような管(痔ろう)ができる
【痔ろうの症状】
腫れ、できもの、痛みが主な症状です。
・おしりの腫れや痛み
・膿が出る
・肛門の脇にしこりができる
・感染を起こすと発熱することもある
【痔ろうの原因】
痔ろうの原因は、下痢などにより肛門の組織に入った細菌が感染を起こすことによるもの。細菌が侵入する肛門内のくぼみは小さいので、通常は便が入り込むことはありませんが、下痢などでやわらかすぎる便だと入り込む場合があります。体の抵抗力が弱っているとき、ストレスによる免疫力の低下などにより感染しやすくなると考えられます。
【痔ろうの治療法】
自然治癒や薬での完治が難しいため、手術が基本的な治療になります。痔ろうを放置すると痔ろうがんになる恐れもあるので、早めの受診が大切です。
※治療についての詳細は、【痔の基礎知識④】病院での痔の診察・治療についてを参照してください。
痔以外の病気の場合もあるので心配なら受診を
おしりの痛みや出血、血の混じった便など、下のような痔と似た症状を示す病気もあります。特に大腸がんは痔と間違えやすい病気の代表的なもの。出血が続く場合、早めに受診し、大腸内視鏡検査を受けましょう。
痔と似たような症状がある病気
・直腸脱:痔核の脱出と似ているが、腸が肛門から脱出してくる
・直腸がん、大腸がん:便に血が混じる、便秘や下痢をくり返す、腹痛・腹部の張りなど
・クローン病・潰瘍性大腸炎:血便や下痢、腹痛、発熱など
・過敏性腸症候群:便秘や下痢をくり返す、腹痛や腹部の張りが排便すると楽になるなど
まとめ
痔の種類によって、症状や治療法は異なりますが、いずれも便秘や下痢といった排便習慣や便の状態と密接に関わっています。次の記事では痔の予防や悪化、再発を防ぐための「正しい排便」について解説します。
【痔の基礎知識②】痔の予防や改善は、正しい排便から

松島小百合先生
2014年に北里大学医学部を卒業後、横浜市立市民病院で初期臨床研修を修了。以後、同院の消化器外科で後期臨床研修を経て、2019年より医療法人恵仁会松島病院に勤務。2021年に外来部門長を務め、2025年より副院長・常任理事に就任。
参考
「痔で悩む人の毎日ごはん」(女子栄養大学出版部)
日本大腸肛門病学会 肛門疾患・直腸脱診療ガイドライン2020年版改訂第2版
おいしい健康 痔 食事のきほん
関連記事
【痔の基礎知識②】痔の予防や改善は、正しい排便から
【痔の基礎知識③】痔にやさしい食事と生活習慣
【痔の基礎知識④】病院での痔の診察・治療について
痔と食事についての特集ページも公開中▼

