くらしの栄養学

【痔の基礎知識④】病院での痔の診察・治療について

4509

監修:松島病院 大腸肛門病センター副院長 松島小百合先生

痔の種類や症状、進行の度合いによって、治療法は異なります。治療法は生活習慣の改善、薬の服用、手術などがありますが、どの方法が適しているかは医師の診察を受けてみないとわからない場合がほとんどです。症状が治らない場合やつらい場合は放置せず、早めに受診する方が回復が早まることが期待できます。ここでは痔核・裂肛・痔ろうの病院での診察や治療の流れを解説します。

この記事のポイント

・受診する際は肛門科や肛門外科へ
・痔核、裂肛は軽い場合、生活習慣の改善や薬で治療
・痔ろうは手術が基本。痔核、裂肛はひどくなると、手術の場合もある

病院を受診するときは?

おしりの痛みや腫れ、出血が続く場合、市販薬で回復しない場合、おしりに違和感がある場合は、肛門科や肛門外科を受診しましょう。近くにない場合は外科または消化器外科を受診してください。
特に出血は、痔ではなく大腸の病気の可能性もあるので、早めに受診を。初診の場合、病院では一般的に下のような診察が行われます。
※おしりの症状については、【痔の基礎知識①】痔ってどんな病気?痔の種類や原因を知ろうを参照

【どんな診察をするの?】
・問診 症状などを問診票に記入
・診察
1)視診・・・目で肛門周辺の皮膚の状態を見る
2)触診・・・直接患部に触って痔の状態を調べる
3)肛門鏡検査・・・肛門鏡という器具を使って肛門内の状態を見る

診察では肛門が狭いなどの特別な状態がない限り、肛門に小さな機械を挿入して、肛門の内部を広げて観察します。緊張で肛門が締まると痛みを伴うこともあるため、深呼吸してできるだけリラックスして診察を受けることがコツです。

女性で男性医師の診察をためらう場合は、女性医師が診察する病院、女性専用外来を設けている医療機関も増えています。

痔の種類によって治療は異なる

痔の種類や状態によっては生活習慣や薬で治るものもあれば、手術が必要なものもあります。自己判断せず、自分の痔の種類と状態について医師から説明を受け、正しい治療を受けることが大切です。

痔の種類とおおまかな治療法

痔核(いぼ痔)
痔核のできる場所によって「内痔核」と「外痔核」に分かれます。症状が軽い場合は生活習慣の改善や市販薬で様子をみることもできますが、改善しない場合や症状がひどい場合は病院での治療が必要です。
裂肛(切れ痔)
肛門の皮膚が切れたり裂けたりする状態です。症状が軽い場合は市販薬で改善を試みてもよいですが、改善しない場合は病院での治療が必要です。
痔ろう(あな痔)
細菌感染による膿のトンネルのような管ができた状態です。基本的には病院での治療が必要です。
※それぞれの痔の詳細は、【痔の基礎知識①】痔ってどんな病気?痔の種類や原因を知ろうを参照

市販薬の種類

痔核、裂肛の市販薬には、塗り薬、おしりに入れる薬、飲み薬などがあります。
外用薬:炎症を抑える、痛みやかゆみを鎮める、殺菌作用のある成分を配合
軟膏・・・肛門付近または肛門の外側の痔に塗る (外痔核、裂肛に使用)
注入軟膏・・・肛門の外側、内側両方の痔に使える(内痔核、外痔核、裂肛に使用)
座薬・・・肛門内部の痔に使う(内痔核に使用)
内服薬: 鎮痛や止血作用、炎症を抑える作用のある成分を配合

「痔核」の治療は、生活習慣の改善と薬が中心

痔核の治療は「保存的治療」を行うことがほとんどです。保存的治療とは、生活習慣(排便・食事)の改善と薬による治療のことです。これらにより、出血や腫れなどの症状の改善を促します。
ただし、脱出などの症状がひどい場合や保存的治療でも改善しない場合は、手術などの「外科的治療」が検討されます。

【痔核の診療と治療の方法】
4525

生活習慣の改善① 正しい排便習慣を身につける

排便時の強いいきみや長時間のトイレ滞在は症状を悪化させます。1回の排便は3分以内に済ませ、便意を感じたらすぐにトイレに行き、2、3分で便が出なければあきらめてトイレを去りましょう。
※正しい排便については、【痔の基礎知識②】痔の予防や改善は、正しい排便からを参照

生活習慣の改善② 便秘予防につながる食生活

痔核と大きく関わるといわれているのが「便秘」。慢性便秘の場合は食物繊維の摂取と十分な水分補給を心がけましょう。
※食生活についての詳細は、「痔と食事」ページ【痔の基礎知識③】痔にやさしい食事と生活習慣を参照

一時的な痛み、腫れ、出血には薬による治療を行う

痔核の痛み、腫れ、出血には、内服薬、外用薬(軟膏、注入軟膏、座薬)が使われます。医師が痔核の場所や状態を確認したうえで、使いやすさなども考慮して薬を選びます。

痔核で手術を行う場合

内痔核は進行度が4段階のうちIII度以上(脱出が見られる場合)や、薬物療法でも改善がみられない場合は、手術が検討されます。
手術の方法は痔核を切除する方法と、炎症を起こして痔核を硬くすることで脱出や出血などの症状を改善する方法があります。
痔核の症状・大きさ・裂肛や痔ろうなどの他の肛門疾患があるかなど様々な状況を考慮し、医師と相談して治療方針を決めていきます。

手術の中では「結紮(けっさつ)切除術」がポピュラー 

痔核は肛門にとって余分なたるみです。そのたるみを切って根本に入る血管を糸で縛り、痔核を切除する治療法が「結紮切除術」です。III度以上のあらゆる形態の内外痔核に対応できます。入院が必要で、一般的には手術後1週間〜10日前後で退院できます。傷口が治るまでは痛みと出血があります。
【メリット】
・再発が少ない
・大きな痔核も確実に治せる
・肛門の機能に障害を与えない

【その他の痔核の手術】
ゴム輪結紮療法
  痔核の根元を特殊な輪ゴムで縛り、血流を止めて壊死・脱落させる治療法。内痔核の場合、痛みがほとんどなく簡便な手術といわれています。術後の合併症のリスクから、血液凝固異常術の方や抗血栓薬を服用している方には行われません。
PPH法
  特殊な専用の機械を使って、痔核の上方の直腸粘膜を切除・縫合。痔核そのものを切らずに直腸粘膜を上に吊り上げて痔核を縮小させる治療法。
分離結紮法
内痔核、外痔核に幅広く対応。痔核の根元を糸で縛り、血流を止めて壊死・脱落させる治療法。

「裂肛」の治療は、生活習慣の改善から

急性裂肛の治療は、生活習慣の改善や薬による「保存的治療」で改善することがほとんどです。便通をよくすれば、改善するので、正しい排便を意識しましょう。

生活習慣の改善 便秘と下痢を防ぐ食生活

便秘や下痢にならないような食事を心がけます。便秘の場合は、野菜などの食物繊維を多く含む食材をバランス良く食べることが大切です。下痢予防には冷たい飲み物、アルコール、香辛料のとりすぎには注意します。
※食生活についての詳細は、「痔と食事」ページ【痔の基礎知識③】痔にやさしい食事と生活習慣を参照

軟膏や座薬のほか、便秘・下痢を防ぐ薬を使うことも

一時的な痛みには、軟膏や座薬などの外用薬が処方されます。原因が便秘や下痢なので、整腸剤や軟便剤を服用することもあります。

慢性裂肛の場合、手術の可能性もある

慢性裂肛は急性裂肛をくり返し、自然に治らなくなった状態で、手術が必要となる場合があります。手術は全体の5%程度といわれています。

【裂肛の手術の種類】
側方内肛門括約筋切開術
内肛門括約筋(肛門の周りの輪状の筋肉)の一部を切開し、括約筋の緊張(けいれん)を取り除く手術。裂肛の再発、慢性化を防ぎます。
裂肛切除術
慢性的な裂肛によってできた傷や肛門ポリープ、見張りイボを切除する手術。
皮膚弁移動術
慢性的な裂肛によってできた傷を切除し、近くの皮膚を移動させて縫合する手術。肛門がせまくなった状態を改善します。

「痔ろう」の治療は、手術が基本

痔ろうは生活習慣の改善や薬では完治せず、手術が必要です。痔ろうを放置すると膿がたまる状態がくり返され、肛門括約筋(肛門の周りの輪状の筋肉)の働きが妨げられることがあります。放置するとがんになる場合があります。

痔ろうの手術の主な種類

瘻管(ろうかん)開放手術
痔ろうの管をすべて切り開く方法。浅いタイプの痔ろうや後方の痔ろうなどに行われることが多い手術です。
括約筋温存手術
括約筋を切らずに、痔ろうの管を取り除く方法。外肛門括約筋を温存するもの、内肛門括約筋を温存するもの、両方を温存するものなどの方法があります。深いタイプの痔ろうや前側方の痔ろうに行われることが多い手術です。

痔ろうでおしりが痛いときの対処法

膿がたまっておしりの周囲が腫れて痛いときは、うつぶせになって患部にタオルを置き、上から氷などで冷やすと痛みがやわらぎます。

まとめ

痔の種類によって、治療方法はさまざまです。いずれも早めに適正な診断を受けることが、改善への近道です。予防や再発を防ぐためには、正しい排便と食事や生活習慣に気を配ることが大切です。

松島病院 大腸肛門病センター 副院長
松島小百合先生
2014年に北里大学医学部を卒業後、横浜市立市民病院で初期臨床研修を修了。以後、同院の消化器外科で後期臨床研修を経て、2019年より医療法人恵仁会松島病院に勤務。2021年に外来部門長を務め、2025年より副院長・常任理事に就任。

松島病院 大腸肛門病センターホームページ

参考
「痔で悩む人の毎日ごはん」(女子栄養大学出版部)
日本大腸肛門病学会 肛門疾患・直腸脱診療ガイドライン2020年版改訂第2版
松島病院大腸肛門病センター「痔核の保存的治療」
おいしい健康 痔 食事のきほん

関連記事
【痔の基礎知識①】痔ってどんな病気?痔の種類や原因を知ろう
【痔の基礎知識②】痔の予防や改善は、正しい排便から
【痔の基礎知識④】病院での痔の診察・治療について

痔と食事についての特集ページも公開中▼

便秘対策などで予防・改善 痔と食事便秘対策などで予防・改善 痔と食事
編集:おいしい健康編集部