くらしの栄養学

【骨粗しょう症の基礎知識①】骨粗しょう症ってどんな病気?原因や診断について

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監修:東京慈恵会医科大学 整形外科学講座主任教授 整形外科部長 斎藤充先生

骨粗しょう症は「骨がもろくなって骨折しやすくなる病気」とされています。閉経後の女性に多いものの男性や若い世代でも見られ、隠れ患者数は約1600万人ともいわれています。誰でも起こりうる病気として、まずは骨粗しょう症の基本的なこと、原因やどんなサインがあるかを知っておきましょう。

この記事のポイント

・骨粗しょう症は骨がもろくなって、骨折しやすくなる病気
・痛みなどの自覚症状が出にくく、骨折してはじめて気づくことも
・閉経後の女性だけでなく、男性も注意が必要
・骨粗しょう症と関係する病気は多く、予防と早期治療がカギ

骨粗しょう症について理解し、骨の強化の大切さを知ろう

骨粗しょう症は、「骨がもろくなり、骨折しやすくなる病気」とされています。ですが、骨折のリスクだけでなく、多くの病気に関わる病気でもあり、骨を強くすることは健康のためにも日頃から意識することが大切です。

骨の強さは「骨密度」と「骨質」で決まる

骨がもろくなるのは、主に2つの原因があります。1つは、骨の中のカルシウムなどが減って「骨密度」が低下し、スカスカになっていることが考えられます。
もう1つが「骨質」で、骨の中のコラーゲンの質が悪いと、骨がもろくなります。
※詳しくは骨粗しょう症の基礎知識②を参照

骨の状態は自分ではわかりにくく、骨折で気づくことも

骨の強度を左右する「骨密度」と「骨質」は、目には見えず、もろくなっていても自覚症状が出にくいものです。そのため、検診や医療機関の受診で調べないとわかりません。中には骨折して受診したら骨粗しょう症だったというケースもあります。
そこで、まずは自分の骨の状態を知っておくことが、予防や改善への第一歩といえるでしょう。

骨粗しょう症の原因は様々

特に閉経後の女性、60歳以上の男性は気をつけた方がいいといわれる骨粗しょう症。骨をもろくしてしまう原因には、以下のようなことが挙げられます。

加齢

人間の骨密度は20歳ぐらいにかけて一気に上がり、40〜50歳ぐらいから下がっていきます。加齢により骨代謝(古い骨が壊され、新しい骨がつくられること)のバランスがくずれることも一因です。

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性ホルモンの減少

女性ホルモン「エストロゲン」には、骨代謝を保つ働きがありますが、閉経後はエストロゲンの分泌が急激に減ってしまいます。
男性も50歳以降は性ホルモンが減少し、骨密度低下やコラーゲンの老化により「骨質劣化型の骨粗しょう症」になりやすいといわれています。

栄養バランスの偏り

骨の材料となるカルシウムだけでなく、骨の健康に関わる栄養素はビタミンD、K、B6、B12、C、葉酸、たんぱく質など様々。栄養バランスが偏った食生活をしていると、これらの栄養が十分にとれていないことも。
特に日本人はカルシウム、ビタミンDの摂取量が不足しているので、意識してとりたいものです。

運動不足

骨を強くする、骨折を防ぐためには運動習慣も大切です。運動不足や体を動かさないことが続くと、筋力が低下して転倒からの骨折の原因にもなります。

喫煙・お酒の飲みすぎ

喫煙、お酒の飲みすぎはカルシウムの吸収を阻害します。また、喫煙は女性ホルモンの働きを悪くするとされています。

他の病気

動脈硬化、高血圧、糖尿病、慢性腎臓病(CKD)、慢性肺疾患(COPD)の方は、骨のコラーゲンが老化するタイプの骨粗しょう症のリスクが高まることがわかっています。

骨粗しょう症のサイン。こんな症状があったら病院へ

自分でもチェックしやすい骨粗しょう症のサインには下のようなことがあります。あてはまるものがある場合は一度、整形外科や内科、婦人科、骨粗しょう症専門外来で調べてもらうとよいでしょう。

月経不順

骨密度は、女性ホルモンとの関係が深く、次のような月経不順が思いあたる場合は骨密度が少ない可能性があります。

・月経の周期が正常の範囲より短かった
・月経の周期が正常の範囲より長かった
・初潮が早かった
・閉経が早かった
・月経のあった年数が短い

高血圧、動脈硬化

骨のコラーゲンの劣化は血管の老化をもたらします。骨密度には問題がなくても骨質の劣化が、高血圧や動脈硬化の一因になっているかもしれません。

身長が2〜4cm縮んだ

20代の頃より身長が2cm以上縮んだ場合、骨粗しょう症からの骨折をしている場合があります。骨粗しょう症により背骨がもろくなって起こる圧迫骨折は、痛みを伴わず気づかないこともあり、「いつのまにか骨折」と呼ばれています。

「いつのまにか骨折」のセルフチェック
壁にかかと、おしり、背中をつけてまっすぐ立ち、後頭部をつけようとしてもつけられない場合は背骨を骨折している可能性があります。
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いつのまにか骨折は、放置すると次の骨折の連鎖(ドミノ骨折)にもつながるため、身長低下の他にも、以下の症状があったらすぐに受診しましょう。

・背中が曲がってきた
・背中や腰が痛む

閉経後の女性、60歳以上の男性は異常がなくても検診を

加齢や性ホルモンの減少により、骨粗しょう症のリスクは高まります。上のサインにあてはまらなくても、女性は閉経後、男性は60歳以上になったら検診で自分の骨の状態を知っておき、骨粗しょう症の予防や骨を強くする対策に取り組むとよいでしょう。

骨粗しょう症の隠れ患者数は約1600万人

骨粗しょう症かどうかは、検診や医療機関で調べないとわからないこともあり、隠れ患者数は約1600万人と推定されています。骨粗しょう症のサインがなくても、自分の骨の状態を知り、早めの予防が得策です。

骨粗しょう症の患者数 

厚生労働省の令和5年患者調査によると、骨粗しょう症の治療を受けている患者数は138万7000人(男性7万8000人、女性130万9000人)となっています。
ですが、推定される患者数は1590万人(男性410万人、女性1180万人)ともいわれています(参考:骨粗鬆症財団 数字でみる骨粗しょう症より Yoshimura N, et al, J Bone Miner Metab 40(5): 829-838, 2022)。
骨粗しょう症の検診の受診率は5%程度という現状もあり、隠れ患者数がいかに多いかがわかります。

骨粗しょう症の診断基準

骨粗しょう症の診断基準は、骨密度測定のTスコア※が70%未満の場合で、70〜79%が骨量減少(骨減少症)、80%以上なら正常と診断されます。
※Tスコア=20〜44歳までの健康女性の平均値(YAM値)を100として、その何%にあたるかを比べた数値。

ただし、骨密度が正常でも骨質が劣化しているタイプの骨粗しょう症の場合もあるので、詳しい検査をおすすめします。
※検査や診断の詳細は骨粗しょう症の基礎知識③を参照

骨粗しょう症になりやすい人は?

一般的に閉経後の女性、高齢者は骨粗しょう症のリスクが高まりますが、主な原因やサイン以外に、次のような方も骨粗しょう症や骨折の心配があるため、覚えておきましょう。

・骨折したことがある方・・・骨折したことがない方に比べて骨折しやすい
・両親のいずれかが大腿骨に近い部分を骨折したことがある方・・・骨折リスクが高まる
・やせすぎの方(BMI18.5未満)・・・大腿骨に近い部分の骨折リスクが高まる

骨粗しょう症がもたらす、健康寿命を縮めるリスク

骨粗しょう症は骨折のリスクが高まるだけではありません。骨折による寝たきりや介護が必要な状態になることで、健康寿命を短くしてしまうリスクがあります。また、骨粗しょう症が他の病気の発症や進行に関わることもわかってきています。

骨折から寝たきり、要介護の状態に

大腿骨頸部(足の付け根)や手首、背中、肩などの骨を骨折すると立つこと、歩くことが困難になります。特に高齢者の骨折は注意が必要で、寝たきりや要介護状態になる大きな原因になります。
最初は1か所の骨折でも、他の骨が弱くなっていると続けて連鎖的に骨折する「ドミノ骨折」という言葉もあり、骨折を防ぐことが大切です。

骨粗しょう症は万病のもと

骨粗しょう症の骨折が原因で、活動量が減り、筋肉量や筋力も減ると、高齢者の「サルコペニア」(筋力低下に伴い身体能力が衰える状態)にもつながります。また、最近の研究では、骨粗しょう症の方は動脈硬化や心臓疾患を合併しやすいことがわかっています。

骨折する前に骨を強くすることが大切

強くて骨折しにくい骨を維持することが、骨折や他の病気を防ぐことにもつながります。高齢者に限らず、若いうちから骨の健康を意識しておくことが望ましいでしょう。

まとめ

骨粗しょう症の予防はもちろん、もし診断されても生活習慣の改善や治療により、骨を強くすることは可能です。実際、骨は代謝により新しく生まれ変わっています。次の記事で骨の役割やしくみについて知っておきましょう。
【骨粗しょう症の基礎知識②】骨の役割と強さのしくみ

東京慈恵会医科大学 整形外科学講座主任教授 整形外科部長
斎藤充先生
東京慈恵会医科大学整形外科学講座主任教授。同大附属病院整形外科・診療部長。1992年、東京慈恵会医科大学卒。2020年より現職。日本骨代謝学会理事、日本骨粗鬆症学会理事、日本人工関節学会理事などを兼務。骨代謝の診断・治療・研究で世界を牽引する。

東京慈恵会医科大学附属病院ホームページ

参考
「100年骨」(サンマーク出版)
骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン 2025年版
厚生労働省 令和5年患者調査
骨粗鬆症財団 数字でみる骨粗しょう症
Yoshimura N, et al, J Bone Miner Metab 40(5): 829-838, 2022

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編集:おいしい健康編集部