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ヨーグルトの「菌」で目指す健康習慣【菌の働きのまとめ付】

【連載】食でかなえるステイヤング 第5回(文:山本二季/監修:西沢邦浩)

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健康医療ジャーナリスト・西沢邦浩さん監修による、若々しく健康に生きるための食を考える連載企画。

第5回は、第3回の記事でご紹介した納豆と並び、高い人気を誇る発酵食品「ヨーグルト」を取り上げます。 スーパーマーケットやデパートのヨーグルト売り場に行くと、商品の種類がたくさんあって、どれを選んだらよいのか迷ってしまいますよね。

そこで今回は、ヨーグルトに含まれている「菌」に着目。それぞれの菌が、私たちの体にもたらしてくれる健康作用を知ることで、自分に合ったヨーグルト選びがしやすくなります。

さらに、これからのパーティーシーズンにぴったりな、管理栄養士監修のヨーグルトレシピも紹介。世界中でさまざまな発展をとげているヨーグルトならではの、多様な取り入れ方を楽しんでみてください。

そもそもヨーグルトとは?

ヨーグルトは、原料であるミルク(乳)を菌で発酵したもの。ヨーグルトの作り方には国際的な規定があり、国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)により設置された政府間機関CODEX委員会が定めています。

国際食品規格(CODEX)では、ラクトバチルス・ブルガリカスという乳酸桿菌のブルガリア菌と、ストレプトコッカス・サーモフィラスという乳酸球菌のサーモフィラス菌の2種類で乳酸発酵したものをヨーグルトと定めていました。しかしヨーグルトの世界的な広まりを受け、近年では「あらゆる乳酸桿菌属と乳酸球菌のサーモフィラス菌」により発酵したものも、ヨーグルトの一種とするようになりました(※1)。

また日本では、「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」の中にヨーグルトという用語はなく、一般にヨーグルトと呼ばれているものは「発酵乳」に分類されています。

日本で「ヨーグルト」といわれているものの中には、原料が乳ではなく豆乳や大豆を使ったもの、さまざまな菌で作られたものなど種類が豊富にあり、味や風味も多種多様です。

また、栄養強化の目的で栄養素を加えたものも増えています。中性脂肪を下げるEPA・DHA、善玉菌のエサになるイヌリン、毎日の生活で不足しがちな鉄分やカルシウムなどを添加して、健康的な生活をサポートする食品としてヨーグルトは日々進化を続けているのです(※2,3)。

パワーの源!菌に期待される効果

スーパーのヨーグルト売り場に行くと、たくさんの商品が並んでいます。各社のパッケージには、多種多様な「菌」の名前が記されていますが、菌によって期待される作用もまたさまざまです(※2,3)。

(以下、菌の名前は、『消費者庁「特定保健用食品について」(※2)』、『消費者庁「機能性表示食品の届出情報検索」(※3)』の表記に則り記載しています)

1. 腸活⇒LB81乳酸菌、L.カゼイ菌シロタ株

まずヨーグルトといえば、“腸活”ですよね。この「お腹の調子を整える」作用を持つのが、LB81乳酸菌やL.カゼイ菌シロタ株などの菌です。これらの菌には、腸内環境のバランスを整え、お通じの改善に役立つ働きがあります。

2. 脂肪吸収の抑制⇒ガセリ菌SP株

またガセリ菌SP株には、食事とともにとることで脂肪の吸収を抑え、内臓脂肪を減らすのを助ける働きが。

3. ウイルスから体を守る⇒プラズマ乳酸菌

健康な人の免疫機能の維持に役立つとされるプラズマ乳酸菌を含むことで、ウイルスなどから体を守る力を上げる機能を持つヨーグルトも販売されています。

菌の働きを知っていれば、自分に合ったヨーグルト選びができるようになります。

ヨーグルトの特定保健用食品と機能性表示食品に使われる主な菌

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※クリックすると拡大します。

国によって異なるヨーグルトの種類や食べ方

多種多様な菌がウリともいえる日本のヨーグルト市場ですが、世界に目を向けると、発酵に使う菌だけではなく、原材料となる乳の種類が日本とは比べものにならないほどバラエティーに富んでいます。ヨーグルト生産国ランキングTOP5は、1位 サウジアラビア、2位 モンゴル、3位 タイ、4位 ウルグアイ、5位 トルコです(※4)。それぞれの食文化の特徴を見ていきましょう。

2019年 ヨーグルト生産国ランキングTOP5

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※クリックすると拡大します。

例えばヨーグルト生産国1位のサウジアラビアでは、牛や水牛、山羊、羊、ラクダの乳からヨーグルトを作ります(※5)。最も一般的なのが、ドリンクヨーグルト「ラバン」(※6)。これも牛だけだなく、山羊や羊の乳から作られ、主に昼食時に飲まれるそう。味は、牛乳に近いものなど商品によって異なり、また調理の際、調味料のように使われることもあるようです。

またアジア有数の牧畜国モンゴルでは、牛、山羊、羊、馬、ラクダなどのすべての家畜乳を利用しています(※7)。主に食べられている「タラグ」は、牛や山羊などの家畜からとった乳を自然発酵して、表面に浮いたクリームを取り除いた脱脂発酵乳。そのまま食べたり、乾燥乳製品の原料にもなります。

タイではプレーンなヨーグルトだけでなく、フルーツなどを加えた甘いフレーバーヨーグルトが人気(※8)。乳酸菌飲料、飲むヨーグルトの市場も年々拡大しています。

ヨーロッパからの移民が多いウルグアイでも、さまざまなフレーバーのヨーグルトが好まれています。その中のひとつが、スペインで世界初のヨーグルト工業化に成功したダノン社のYOGURÍSIMO。この商品は、2022年8月から製造拠点をすべてウルグアイに移しています(※9)。

羊乳生産量世界一であるトルコの伝統的なヨーグルト「シリブヨ―グルト」は、脂肪含量の多い羊乳や水牛乳から作られます。乳を容器に入れて40~50℃で1時間ほど温め、表面にクリーム層を作りながら発酵させるという、めずらしい製法。これに食塩水を混ぜた「アイラン」は、トルコの国民的飲み物です。

このように世界各国で独自の発展をとげ、その土壌や環境に合ったさまざまな食べ方で親しまれているヨーグルト。ついデザートとしてそのまま食べることの多いわたしたちですが、こうした世界の人たちのヨーグルトの食べ方を真似てみると、新たな発見があり、食卓のバリエーションが広まりますよね。

世界の料理でヨーグルトを楽しみましょう!管理栄養士おすすめレシピ

おいしい健康の管理栄養士が、世界の料理を参考にヨーグルトのレシピを開発しました。
どれも珍しい料理で、作りがいのあるものばかり! ぜひ楽しみください。

【トルコ料理】

ミートボールのヨーグルト煮込み
ヨーグルトのさっぱりとした酸味とひき肉のうま味で味わい深い一皿です。肉だねの玉ねぎは加熱せずに加え、食感を残しました。

【スーダン料理】

焼きなすのヨーグルトサラダ
こんがり焼いたなすにヨーグルトソースをかけた一皿。ソースにはにんにくを加え、アクセントをプラス。お好きな野菜に合います。

【ブルガリア料理】

アスパラと玉ねぎのヨーグルトスープ
ヨーグルトの酸味でさわやかな味わいのスープ。玉ねぎはしっかりと炒めて甘味を引き出すのがポイントです。

※1:独立行政法人農畜産業振興機構 「【業務関連情報】世界中で愛されるヨーグルト」
※2:消費者庁「特定保健用食品について」
※3:消費者庁「機能性表示食品の届出情報検索」
※4:FAOSTA(アクセス日:2022年12月5日)
※5:SAUDI ARABIA DAIRY PRODUCTS MARKET - GROWTH, TRENDS, COVID-19 IMPACT, AND FORECASTS (2022 - 2027)
※6:サウジアラビアの伝統食 必ず食べたい郷土料理8選
※7:渡辺 幸一:日本乳酸菌学会誌. 2011;22(3):153-161.
※8:明治ブルガリアヨーグルト倶楽部, ヨーグルトでめぐる世界の食卓#30
※9:Portal 180.com.uy, YOGURÍSIMO AHORA ES PRODUCCIÓN 100% NACIONAL

【西沢 邦浩さん連載「食でかなえるステイヤング」】
第3回 前編 コロナの症状緩和で海外医師も注目!「納豆」の新世界
第3回 後編 フランス人も魅了!世界の納豆料理探究 【アジア料理のレシピ3品付】
第4回 美肌とダイエットの頼れる味方!旬のベリーで冬太り改善
そのほか、西沢 邦浩さん記事はこちら

監修
西沢 邦浩さん
早稲⽥⼤学卒業。⼩学館を経て、91年⽇経BP社⼊社。98年『⽇経ヘルス』創刊と同時に副編集長に着任。2005年より編集⻑。08年に『⽇経ヘルス プルミエ』を創刊し編集長をつとめる。2014年⽇経BP総研 マーケティング戦略研究所上席研究員、16年より同主席研究員。2018年4⽉より⽇経BP総研 メディカル・ヘルスラボ客員研究員。ほかに、同志社⼤学⽣命医科学部委嘱講師、⽇本腎臓財団評議員などを務める。 著書に、『⽇本⼈のための科学的に正しい⾷事術』(三笠書房)など。


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編集:おいしい健康編集部
文:山本二季
監修:西沢邦浩