食が細くなったら…高齢者が栄養をとりやすい食事の工夫【管理栄養士監修】
公開日: 2026年8月14日

「以前ほど食べられなくなった」「1人分を作っても残してしまう」。
年齢を重ねると、そんな変化に気付く方も多いのではないでしょうか。
食が細くなるのは、気持ちの問題ではありません。加齢に伴う体の変化がいくつも重なって起こります。
ただ、食べる量が減ったままが続くと、体重や筋肉が落ちて、疲れやすさや転びやすさにつながることがあります。とはいえ、急に全部変えなくて大丈夫です。今の食事量のままでも、必要な栄養をとる工夫はあります。
この記事では、食が細くなる理由と、少ない量でも栄養をとるための工夫をご紹介します。
年齢とともに食が細くなるのはなぜ?
理由は一つではありません。よくあるものを挙げてみます。
- 噛(か)む力・飲み込む力が弱くなる
- 味やにおいを感じにくくなる
- 活動量が減って、おなかがすきにくい
- 薬の影響や、口の中の乾き
- 1人で食べる機会が増え、食事を楽しみにくい
味覚や嗅覚の変化、噛む力・飲み込む力の低下、活動量の減少、薬の影響などが重なることで、「食べたい気持ちはあるのに食べられない」状態になることがあります。まずは、ご自身やご家族に当てはまるものを探してみてください。
高齢期に不足しやすい栄養は?
食べる量が減ると、まず不足しやすいのがエネルギーとたんぱく質です。これらが足りないと、筋肉量や体重の減少につながり、転びやすさや体力の低下にもつながることがあります。
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、65歳以上のたんぱく質の推奨量(1日あたり)は男性60g、女性50gが目安とされています。1日のエネルギーのうちたんぱく質からとる割合は、65歳以上では15〜20%が目標量とされています。50〜64歳の下限(14%)より高めに設定されているのが特徴です。
例えば、1日にとるエネルギー量が1800kcalの方の場合、たんぱく質から270〜360kcal分が目安になります。
「しっかり食べる」ための5つの工夫
①1回の量を減らして、回数を増やす
1食で食べきれないなら、3食にこだわらなくて大丈夫です。午前と午後に補食(4回目・5回目の軽食)を足して4〜5食にすると、1日の合計量が増えやすくなります。
おにぎり半分、ゆで卵1個、ヨーグルト1つ。それでも十分です。
②毎食に、たんぱく質を「ひと品」
夕食にまとめてではなく、毎食に肉・魚・卵・大豆製品・乳製品のいずれかを取り入れると、1日の推奨量に届きやすくなります。
1食のたんぱく質の目安
・肉・魚 → 80g程度(手のひら1枚分)
・卵 → 1個
・豆腐 → 1/2丁(150g程度)
・納豆 → 1パック
・牛乳 → 200ml、ヨーグルト → 1個
※食品によってとれる量は違います。卵1個や牛乳1杯は6〜7g程度なので、1日のうち1〜2回は肉や魚が入った食事にすると、推奨量に近づけやすくなりますよ。
③少ない量でも栄養価を高める
量を増やせないときは、同じ量に栄養を足す考え方が役立ちます。「エネルギー」と「たんぱく質」を分けて考えると選びやすいですよ。
エネルギーを足すなら
・スープや汁物にオリーブ油を少量加える
・あえ物やサラダにマヨネーズ、すりごまを使う
・ヨーグルトにナッツをプラスする
たんぱく質を足すなら
・ご飯にしらす、卵、納豆をのせる
・みそ汁やスープに牛乳・豆乳を加える
・ヨーグルトにきな粉を加える
食べる量を変えなくても、必要な栄養をとりやすくなります。
④食べやすい形に整える
噛みにくさ・飲み込みにくさがあるときは、調理でカバーできます。薄切り肉やひき肉を選ぶ、加熱時間を長めにしてやわらかく仕上げる、とろみのあるあんやソースをかける。
切り方も効きます。一口大(約3cm四方)よりも少し小さめに切る、繊維を断つように切る。それだけで食べやすさが変わりますよ。
※むせや飲み込みにくさが続くときは、自己判断せず医師や管理栄養士にご相談ください。
⑤「食べたい」気持ちを支える
だしやうま味、酢やレモンの酸味、しょうがなどの香りは、味付けを濃くしなくてもおいしさを感じやすくしてくれます。
そして、だれかと一緒に食べる「共食(きょうしょく)」も大切です。家族や友人と食卓を囲む機会をつくるだけでも、自然と食事量が増えることがあります。好きな器を使う、外の空気を吸ってから食卓につく。これも立派な栄養の工夫です。
管理栄養士が選んだおすすめレシピ5品
「食べやすさ」と「たんぱく質のとりやすさ」を意識して、管理栄養士がおすすめするレシピをご紹介します。
1.はんぺんとえびブロッコリーの中華炒め
やわらかいはんぺんと、とろみをつけたあんで食べやすく仕上げた主菜です。1人分でたんぱく質17.6g。少ない量でもしっかりとれます。
2.とうがんのえびあんかけ
やわらかく煮たとうがんに、えびのうま味をきかせたあんをからめました。旬の副菜で、たんぱく質も10.8g補えます。
3.包丁いらず とろとろそぼろ親子丼
片栗粉のとろみで飲み込みやすく仕上げた親子丼。包丁を使わず作れて、1人分でたんぱく質24.4gとれます。
4.電子レンジで ミニかき玉うどん
うどん半玉の少量サイズ。食欲がわかない日でも食べやすく、電子レンジで手軽に作れます。
5.パンナコッタ
なめらかな口どけで、噛む力が弱くなっても食べやすい一品。補食としてエネルギーを補いたいときにも◎。
おいしい健康アプリの活用法
レシピにはたんぱく質の量を表示
「やわらかい」「食欲がない」といったお悩みから、レシピの絞り込みができます。レシピはたんぱく質を含む30種類の栄養素を確認でき、多い順に並べ替えることもできます。
プロフィール登録で、パーソナライズ提案
生年月日、性別、体重、病気やお悩みを登録しておくと、あなたに合った食事基準を自動で算定し、食事基準に合うレシピを優先して表示します。
食事記録で、栄養バランスを確認できます
食べたものを記録することで、エネルギーやたんぱく質がとれているかを振り返ることができます。数日分をまとめて眺めると、傾向が見えてきます。
まとめ
食が細くなってきたら、「たくさん食べる」ではなく「少ない量の栄養価を高める」。それが高齢期の考え方です。
回数を分ける、毎食にたんぱく質をひと品、少ない量でも栄養価を高める、食べやすく整える、食べたい気持ちを支える。5つのうち、できそうな1つからで十分です。
体重が続けて減っているとき、食事量が急に落ちたときは、医師や管理栄養士などの専門職に相談しましょう。原因が別にある場合もあります。
噛みにくさや飲み込みにくさが気になる場合は、歯科医師や言語聴覚士などへの相談が役立つこともあります。
参考
・厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」
・厚生労働省「食べて元気にフレイル予防」
・文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
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