くらしの栄養学

噛む力や飲み込む力が気になったら?食事づくりのコツを管理栄養士が解説

4874 「どのくらいの硬さにすればいいんだろう」「やわらかくしたら見た目がおいしそうじゃなくなった」――噛む力や飲み込む力が弱くなったご家族の食事づくりで、こんなふうに悩んだことはありませんか。

おいしい健康には、介護に関わる食事の悩みも日々寄せられています。その実態をより広く把握するため、アプリ利用の有無によらず X 上で「介護の食事で困った場面」を募集しました。
とろみの加減がわからない、刻むと見た目が崩れてしまう、毎日似たようなメニューになってしまう……。
食べる方の安全を守りながら、おいしく楽しい食事を届けたい。その気持ちがあるからこそ、悩みは尽きませんよね。

一口に「介護の食事」と言っても、食べる方の状態やご家族の置かれた環境によって、悩みはさまざまです。
今回は、おいしい健康の管理栄養士が、嚥下に配慮した食事づくりの基本と、今日からできる具体的な工夫をお伝えします。

なぜ「硬さ・食感の調整」はこんなに難しいのか

アンケートに寄せられた声を見ると、硬さ・食感にまつわる悩みの多くは、次の3つに集約されます。

① 「ちょうどいい硬さ」がわからない

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やわらかすぎてもむせる可能性がある。その塩梅が難しい

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とろみ剤を入れるとダマになったり、味が薄まってしまう

食べる方の状態に合った硬さやとろみの加減がつかめないという声が多く聞かれました。
噛む力と飲み込む力は人によって異なり、日によっても変動するため、「昨日は大丈夫だったのに今日はむせてしまった」ということも起こりえます。

② 見た目が変わると食欲が落ちてしまう

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刻むと見た目が崩れて食欲が湧きにくくなってしまう

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ペースト状にするとどれも同じように見えてしまう

食事は味だけでなく、目で見て楽しむものでもあります。
見た目が大きく変わることで、食べる意欲そのものが下がってしまうことは、介護の現場でも大きな課題です。

③ 毎日のことだから、作る側もつらい

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家族と別にやわらかい料理を用意するのが大変

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刻んだり、とろみを付けたりでキッチンの滞在時間が2倍になる

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せっかく作っても『いらない』と言われると心が折れそう

食事づくりの負担感と、食べてもらえない悲しさが重なるという声も少なくありません。

これらの悩みの背景には、「噛む力」と「飲み込む力」という2つの機能の低下があります。
加齢や疾患によってこれらの機能が変化すると、食事の形態を調整する必要が出てきます。
どの形態食べる方にとって適切かは、まずは医師や言語聴覚士、管理栄養士などの専門職に相談することが大切です。

また、毎日の食事を全て手作りするのは大変です。 スーパーには、「やわらか食」と記載された商品も並んでいます。この商品には日本介護食品協議会が定めた「ユニバーサルデザインフード(UDF)」のマークが付いているのが目印です。 市販のUDF商品をとり入れることで、作る側の負担をぐっと減らすことができますよ。 また負担が減るだけでなく「こういうものなら食べてくれるんだ」など発見があるかもしれません。

見た目とおいしさを両立する──今日からできる4つの工夫

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やわらかくすると見た目がおいしそうじゃない

こういう悩みには、ちょっとした調理の工夫で対応できることがあります。
おいしい健康の管理栄養士がおすすめする、具体的なテクニックをご紹介します。

工夫① 「あんかけ」で見た目と飲み込みやすさを同時にカバー

煮物や炒め物にとろみのあるあんをかけると、食材がまとまって飲み込みやすくなるうえ、料理としての見た目もきれいに仕上がります。
片栗粉を水で溶いて加えるだけなので、普段の料理にとり入れやすい方法です。
水溶き片栗粉は、煮立った状態で少しずつ加えてしっかり加熱するのがダマにならないコツです。

工夫②「彩り」は赤・黄・緑の3色を意識

にんじんのオレンジ、かぼちゃの黄色、ほうれんそうの緑など、やわらかく調理しやすい野菜には色鮮やかなものがたくさんあります。
メインのおかずに添えるだけで、食卓がぱっと明るくなります。
ペースト食であっても、食材ごとに分けて盛り付けて色のコントラストを出すと、「何を食べているか」が目で見てわかり、食欲につながります。

工夫③ 「ソース」や「たれ」で味と見た目にアクセント

白い皿にペースト食を盛り付けただけでは、どうしても単調に見えてしまいます。
トマトソースやごまだれ、青のりなどを少量添えるだけで、料理に奥行きが出ます。
香りのある薬味(しょうが、大葉、ゆずの皮など)をほんの少しのせるのも、食欲をそそる工夫です。

工夫④ 「器」を変えるだけで食卓の印象が変わる

深さのあるお椀や小鉢を使うと、少量でもボリューム感が出ます。
白や淡い色の器を選ぶと料理の色が映えますし、ランチョンマットや箸置きなどの小物で季節感を演出するのもおすすめです。 「おいしそう」と感じる食卓は、食べる方の気持ちをやわらかくしてくれます。

食形態だけじゃない──「食べる環境」を見直すヒント

食形態は、誤嚥を防ぎ安全に食べるために欠かせない視点です。
ご家族が「この食形態で大丈夫かな」と気にされるのはとても自然なことです。
一方で、「食べにくそう」「むせやすい」と感じたとき、食形態以外にも目を向けてみると、解決のヒントが見つかることがあります。

姿勢と体の角度

食事中の姿勢は、飲み込みやすさに大きく影響します。
背もたれのある椅子に深く腰かけ、足の裏が床についた状態が基本です。
あごが上がると気管に食べ物が入りやすくなるため、少しあごを引いた姿勢を意識してみてください。

食具の選び方

アンケートでは「普通のスプーンは口に入れづらい。小さめのカフェスプーンがちょうどよかった」という声もありました。
スプーンの大きさや形を変えるだけで、一口量が適切になり、むせにくくなることがあります。
持ちやすいグリップの食具も市販されていますので、試してみるのもよいでしょう。

料理の温度と食べるペース

「食べるペースがゆっくりで料理が冷めてしまう」という声もありました。
少量ずつ盛り付けて、食べ終わったら次を出すようにすると、温かい状態で召し上がっていただけます。
保温性のある器を使うのも手です。
また、その日の体調や気分によって食欲には波がありますので、「今日はこれだけでいいか」と柔軟に考えることも大切です。
「いつ・どんな状態で・どのように食べているか」まで視点を広げてみると、料理の温度や食具、食事のペースなど、食形態以外の要因に解決のヒントが見えてくることがあります。
気になることがあれば、かかりつけの医師や管理栄養士、言語聴覚士に相談してみてください。


管理栄養士が選んだおすすめレシピ

おいしい健康の管理栄養士が、やわらかく仕上げて食べやすく、栄養バランスにも配慮したレシピを5品選びました。 ご家族の状態に合わせて、ぜひお試しください。

ルウ控えめでも こくうまチキンカレー
煮る時間や切る大きさを調整することで食べやすく、ご家族みんなで楽しめる一品に。
かぼちゃと練りごまのポタージュ
なめらかな口当たりで、甘みがあるので食べやすい一品です。練りごまを加えてこくとエネルギーをプラス。
豆腐のたまごあんかけ
たんぱく質がとれて、やさしい口当たりが魅力です。しょうがが効いたあんでやさしい味わいにアクセントをつけます。
コンビニ食材で 中華あんかけ餃子
コンビニで買えるの商品で手軽に作れる一品。あんをかけることで、まとまりやすく飲み込みをサポートしてくれます。
コンビニ食材で 温玉そぼろ丼
市販のお弁当に温玉をプラスするだけ。やさしい口当たりが魅力です。とろっとした卵でまとまりが出て、飲み込みやすさをサポートします。

おいしい健康アプリの活用法

食材を決めてから絞り込む
「豆腐」「鶏むね肉」などの食材で検索したあと、「お悩みで絞り込む」から「やわらかい」を選ぶと、やわらかい食事にしぼれます。さらに「気分」から「さっぱりした料理」「温かい料理」なども組み合わせられます。
プロフィールを登録しておく
食べる方の疾患やお悩みをプロフィールに登録しておくと、その方に合ったレシピが優先して表示されます。
献立・記録・相談をアプリ1つで!献立・記録・相談をアプリ1つで!

まとめ

噛む力や飲み込む力に合わせた食事づくりは、毎日のことだからこそ大変です。
「うまくできない」と感じても、それはご家族の食事を大切に考えている証拠です。
急にすべてを変えなくても大丈夫。
あんかけでとろみを足してみる、盛り付けに彩りを加えてみる、市販のやわらか食を上手に使ってみる──できることからひとつずつ、試してみてください。
食形態の調整だけでなく、姿勢や食具、食べるペースなど、食事の環境を見直すことも、安全でおいしい食事につながります。
困ったときは、一人で抱え込まず、かかりつけの医師や管理栄養士に相談してくださいね。
おいしい健康は、食事づくりに悩むご家族のそばで、これからもお手伝いをしていきたいと思っています。


参考

  1. 日本介護食品協議会「ユニバーサルデザインフードとは」
  2. 日本摂食嚥下リハビリテーション学会「摂食嚥下リハビリテーションの基本 第2版」(2021)

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編集:おいしい健康編集部
監修:おいしい健康管理栄養士